【Photo Essay / Lights & Shadows】目印となる木

Lifestyle
2019.03.28

Photographer / HAL KUZUYA

私の一番好きな桜の木

今年も会いに来た

丘の上にひとり立つ早咲きの桜

 

都会の目印のように、いつもそこにある

 

若い頃、仕事の休憩に立ち寄り

休みの日に寝転び

近くのマンションに住んでいた時は、毎日窓から眺めた

たくさんの一人の時をここで過ごした

何年も何年も

 

人の渦の中で、一人暮らしていると

時々自分のいる場所がわからなくなることがある

自分は何者で、どこへ行くのか

どこへ向かえばいいのか、今いる場所は合っているのか

地面が揺れて、立っている場所すらわからない

方位磁針のない、沼地のように感じたこともある

 

精神的にも体感的にも

目印を見失いそうなとき

 

そんな時に、毎年変わらずそこに咲く

この木がある事で、なんとなく自分の位置を再確認してきたような、気がする

 

今はもう、遠くに住んでいるけれど

一目会いたくて、今年も会いにきた

この桜の木下で、この十数年の月日が静かに思い出される

そして1つ1つが過去であるけれど、

全てが今へ続く、唯一の事柄なのだと

再確信することができる

それは今を生きる自信になる

 

一年のうちの、たった数日

あっという間に咲き、散ってゆく花

 

空に舞う桜を見て思う

目の前を一瞬で通り抜けてゆく、目に見えない時というものを、

一年で一度だけ、その身をもって見せてくれているのではないだろうか

 

時の儚さを、生きる事の美しさを

立ち止まる事の大切さを教えてくれる

目印の様な桜の木

 

今年もありがとう

 

来年また、会いにきます

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