【ストップ温暖化プロジェクトのリーダーにききました】「クライメート・リアリティ・セミナー」に参加すると何が変わるんですか?

2020.02.27

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オーガニックコスメブランドの社長が行う温暖化セミナー

Text / Hiromi Tani  Photo / Spring Step

Spring Step : 梶原さんはイギリス発のオーガニックコスメブランド「ニールズヤード レメディーズ」の代表でありながら、目下「クライメート・リアリティ・プロジェクト バイ ケンジ カジワラ(The Climate Reality Project by KENJI KAJIWARA)」と題した地球温暖化に関してのセミナーを、各地で精力的に開催されていますね。“世界一受けたほうがいいセミナー”とも呼ばれ、気候変動が私たちの生活にどのような影響を及ぼしているのか、最新データを交えてわかりやすく説明されています。

 

梶原 建二さん(以下 梶原さん) : ありがとうございます。これは、ノーベル賞受賞者でもある元アメリカ副大統領アル・ゴア氏が立ち上げたプロジェクトで、世界中の多くの人に影響を与えました。環境保護活動を積極的に行っている俳優のレオナルド・ディカプリオもそのひとりです。私は2019年の秋に東京で行われたこのトレーニングにプロジェクトリーダーとして参加しました。その内容を私自身の考察を交え、シェアさせていただいているものです。内容としては144枚のスライドを用いて行う、約90分のセミナーです。

 

Spring Step : これは、ニールズヤード レメディーズの運営とは別に実施されているプロジェクトなのですね。経営者である梶原さんが、なぜこのセミナーを開催しようと思われたのですか?

 

梶原さん : よくそのように質問されるのですが、決して別のことではないんです。私たちのブランドは、人がヘルシーな心身とともに豊かで美しく生きることが目的で、製品だけを通じて利益を追求するだけのブランドではない。いま行っている環境問題のセミナーは、これまで私がやってきたこととなんら変わりはないんです。

 

Spring Step : なるほど、ブランドを通して長年発信してきたメッセージと同じだということですね。

 

梶原さん : その通りです。除草剤や化学肥料に頼らないオーガニックな農法は、目に見えない幾多もの微生物を活性化させ、健康で強い土壌をつくります。その豊かな土に根を張った植物に鳥や昆虫や生き物たちが恵みを与え、生きとし生けるものすべてに繁栄をもたらす。土壌には水分がふんだんに含まれ、植物や環境にとって重要な営みのサイクルの礎(いしずえ)となります。オーガニック製品は単に認証を示すのではなく、豊かな環境生態系を意味するのです。それがニールズヤード レメディーズの原点ですから。

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危機感を感じないと人は動かない

 

Spring Step : ニールズヤード レメディーズのブランド理念は、多くの人に支持されていると思いますが。

 

梶原さん : 必ずしもそうとは言えません。地球温暖化の問題が叫ばれて久しいですが、人は本当に危機感を感じないと行動しない。1985年にブランドを日本にもってきて四半世紀が過ぎた今、それを強く実感しています。17年前にできた表参道本店ビルは、高級レストランを手がける建築家に依頼してうんとハイセンスに設計しましたが、実は廃材やリサイクル可能な素材を使い、自家発電設備やオーガニック素材を使ったビーガンレストランも備えた、究極のエコビルなんです。当時、オーガニック製品は、ストイックで厳格かつ素朴なものだと思われていたと思います。でも美しくてヘルシーで、スタイリッシュな側面があることを伝えたかった。

 

Spring Step : それは理解されなかったのでしょうか。

 

梶原さん : 残念ながらされていません。環境問題に関しても、これだけ日夜、報道がなされているものの、理解が足りないと思います。大量の情報があふれていますが、それらがすべて断片的だからです。異常気象や森林伐採、フードロスにプラスチックビーズなどいろんなフェーズがあって、本来はすべてつながっていることなんだけど、これらを俯瞰で見て、自分のこととして捉えるのがとても難しくなってきている。

 

Spring Step : 環境問題は非常に複合的ですよね。最近ではオーストラリアの森林火災によっても甚大な被害が起こりました。

 

梶原さん : 今回の森林火災は、化石燃料による二酸化炭素の上昇が引き起こしたといわれています。陸からの水分蒸発が火災の悪化と長期化を招きました。そしてオーストラリアの石炭燃料の65%は日本に輸出されていることを、多くの人は知らないでしょう。

 

Spring Step : そうなんですか。オーストラリアは日本のために石炭を産出しているともいえるんですね。

 

梶原さん : 健常者に“こうすればもっと健康になれる”といっても実行しない、病気になってはじめて、いろんなことをやり始めます。人ごとと思っているうちは危機感ももたないし、警告されて焦らないと動かない。そこで地球温暖化問題の現状をできるだけ多くの方と共有し、ダイレクトに理解してもらいたいと考え、このセミナーをスタートしたのです。

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無償で実施する理由

 

Spring Step : 「クライメート・リアリティ・プロジェクト バイ ケンジ カジワラ」のセミナーは無償で受講できるんですね。

 

梶原さん : そうです。理由は明確で、参加費を払うと人は答えを求めてくるから。環境問題のセミナーなら、“何が正解なのか”を主宰者に問うわけです。それでは、どこにもたどり着かない。

 

Spring Step : 確かに、そのことが問題ではありません。

 

梶原さん : このセミナーの目的は、正しい情報の共有です。事実はひとつですが、ソリューションは人によって立場によって地域によって違うはず。まず現状と原因を理解して、そこからどういうアクションを起こすかは、それぞれが考えること。自ら考えることが大事なんです。

 

Spring Step : 企業のトップである梶原さんが自らプレゼンテーションをされるという点でも注目されています。

 

梶原さん : 企業のトップは往々にして利益の追求を優先し、環境問題を語りたがらないのが常。何らかの取り組みは必要だという意識はあるので、サステイナブルとかSDGsを冠した部署やチームを作って丸投げする。担当者は、利益に相反しない程度に活動する……。これでは何も変わらないし、意識改革もままなりません。リーダーシップをとる人間が、運営をやると同時に取り組むことが重要であると考えたんです。

 

Spring Step : なるほど、だからご自身がやられているわけですね。

 

梶原さん : 物ごとを成し遂げた人や地位を築いた人は数々の足跡を残しています。つまり、そこに至るまでにかなりの環境負荷をかけているわけです。ポジションが上にいけばいくほど、組織が大きくなればなるほど、環境に与える負荷は大きくなる。つけてしまった足跡を少しずつでも消すために、リーダーが環境問題に取り組むことは重要だと思っています。ソリューションの提案をすることで経営も健全になり、ひいては働く社員の満足度もアップするはずだから。

 

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畜産も温暖化の要因⁉︎ 〜セミナーの一部を公開

 

Spring Step : セミナーは「1 地球温暖化って何? 2 温暖化で起こる連鎖の災害とは? 3 1.5度と2.0度の違いとその意味は? 4 地球温暖化の解決の道とは?」の4点に分けて説明され、最後に梶原さんご自身が実践していることについて語られています。温暖化のメカニズムに始まり、近年の平均気温や海水温の上昇している現状、大気汚染や水不足、生態系の変化など、化石燃料依存による機器に関して、一連のフローとともにわかりやすく解説していますね。

 

梶原さん : プロジェクトそのものはアメリカ発ですが、日本の現状や事例を多く盛り込み、また数字も最新のものにアップデートしているので、もう来るところまで来ていることを理解してもらえると思います。

 

Spring Step : 食糧関連の問題として、「家畜による温暖化ガス排出」は衝撃でした。日々私たちが口にしている牛肉や豚肉が、温暖化の大きな要因になっているとは。

 

梶原さん : 輸入食材に依存している日本のフードマイレージの高さは知られていますが、これとともに知っておいていただきたいのが、畜産が環境に及ぼす影響です。地球が維持できる人口は90億人とされており、これを肉食で賄おうとすると700億頭もの家畜が必要となります。農地のために二酸化炭素を吸収している森林を伐採し、飼育には多量の水や肥料が必要。そして近年注目されているのは、牛のげっぷやおならによって排出される大量のメタンガスなんです。家畜関連で排出される温室効果ガスは莫大で、全体の約19%。数字は、飛行機や列車、自動車など輸送関連とほぼ同量ともいわれています。

 

Spring Step : そんなにたくさんの温室効果ガスが、家畜関連から放出されているんですか!

 

梶原さん : 日本ではまだあまり認識されていないかもしれませんが、身近な食糧のことですから、知っておきたい問題です。

 

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「エンバイロンメンタル ヴィーガン」のすすめ〜週に一度、肉食をやめてみる

 

Spring Step : この「クライメート・リアリティ・プロジェクト バイ ケンジ カジワラ」のセミナーに参加するには、どうしたらよいのですか?

 

梶原さん : 一般の方向けには、ニールズヤード レメディーズの表参道本店で随時開催しています。直近では、4月13日(月)です。

応募はこちら。また、ご要望に応じて、企業や会社へ出向いてのセミナーも行っています。

 

Spring Step : 読者の皆さんはもちろん、組織のトップの方にもぜひ聴いていただきたいですね。セミナーはぜひ参加してもらうとして、Spring Stepの読者の皆さんにまず、地球温暖化ストップのためにできることを、何かひとつ教えてください。

 

梶原さん : 「週に一度、ヴィーガンの日をつくる」のはどうでしょう。週に一回やるだけでも体の変化を感じ、心地よく感じられるはずです。世界には環境問題の視点での「エンバイロンメンタル ヴィーガン」を選択する人が増えていて、モーターレースの最高峰「フォーミュラ1(F1)」のトップドライバーであるルイス・ハミルトンをはじめ、多くのアスリートが植物性タンパク質のみで体を鍛えているんですよ。

 

Spring Step : 温室効果ガスを排出する肉食を週に一度はやめてみる、これなら簡単にできそうですね。セミナーの中では、梶原さんご自身が実行されていることもご紹介されています。

 

梶原さん : はい。以下の8項目です。

     ・菜食、ベジタリアンの日をつくる

     ・プラスチックバッグなどを「要らないです、環境によくないので」と断る

     ・自然再生エネルギーの電力を採用する

     ・食品の無駄、破棄をなくす

     ・植林やグリーンを増やす活動に参加する

     ・オーガニック、サステイナブルを選択する

     ・EVあるいは公共の交通機関を使う

     ・プラ製品のシングルユースはしない

 

Spring Step : できるだけ心がけよう、とぼんやり思うのではなく、明確に言葉や文字にする。そうすれば、実行できそうですね!

 

PROFILE

梶原 建二 Kenji Kajiwara /ニールズヤードジャパン 代表取締役社長、株式会社ピューリティー ジャパン 代表取締役社長。ビーガンレストラン「ブラウンライス」も経営。英国製品の輸入を手掛けていたころに「ニールズヤード レメディーズ」に出合い、その理念に共感、世界初の現地法人を日本で設立。以後スタイリッシュなアプローチでオーガニックコスメの製品開発とクリーンなライフスタイルの啓蒙に努める。ホリスティックライフを実践するご意見番として、ビューティ界での信望も厚い。

https://www.nealsyard.co.jp/

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