【エシカルファッションのリーダーに聞きました】エシカルなファッションって何ですか?

Womens life Lifestyle Ecology Special Interview
2020.10.22

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エシカルファッションってなんですか?

Text : Spring Step / Photo : HAL KUZUYA

 

Spring Step : 安里紗さんは、エシカルファッションについてオンラインコミュニティーだけではなく、様々なイベントなどでもお話されていますよね。これまでは、エシカルという言葉自体特別感がありましたが、大手のファストファッションも、サステナブルなプロジェクトの企画をするようになったことで、エシカルファッションという概念が少しメジャーになった気がします。またエシカルってファッションに限らず様々な分野にあることですが、安里紗さんにとって、エシカルファッションてどういう意味を持つものですか?


鎌田安里紗さん(以降安里紗さん) :  そうですね、エシカルは英語では倫理的なという意味ですが、ファッションでエシカルというと、ピンと来ないかもしれませんが、私にとって、エシカルファッションとは大きく2つのテーマがあります。それは、


1)自然環境にどのようなインパクトがあって作られているか

2)生産者の労働環境は配慮されているか


もちろん他にも、動物素材を使う際の、動物の飼育のあり方はどうなっているかなど、色々あります、「ファッションを楽しむこと」は、デザイン性だけではなく自分が着飾ることだけで終わらないファッションの楽しみ方。そういう服との関わり方だと思います。

 

ファッション産業は、世界で2番目に環境負荷が高いとも言われています。石油産業や航空業界と聞くと、すごく負荷がかかっていそうなイメージを持ちやすいですが、洋服でどこでそんなに環境に負荷を与えるのか、と思われがちです。原料まで辿っていくと、コットンも栽培する時に大量の水を使っていた李、肥料や農薬を使うことでCO2を多量に排出しています。また、ポリエステルは石油由来で製造時に多くのエネルギーを消費します。選択時に流れ出るマイクロファイバーの影響も深刻です。


Spring Step :  廃棄も問題になっていますよね。


安里紗さん :  はい、そうなんです。日本では、流通している洋服の約半分は廃棄されているとも言われています。めちゃエネルギーかけて作っているのに捨てているとなると、誰が聞いてももったいない!って思いますよね。

また、日本で流通している洋服の約98パーセントは海外性で、日本で作られているものは約2パーセントなんです。


Spring Step :  国産のお洋服は、たったの2パーセントなんですか?


安里紗さん :  はい、私が生まれた1992年は、50パーセントだったんですよ。


Spring Step :  それは原料と縫製が国産ということなんですか?


安里紗さん :  いいえ、縫製が日本でされている洋服です。原料から日本で作られているものは、ほとんどないのではないでしょうか? 洋服で「メイドイン」と表記をするのは縫製された場所なんです。それが「日本」というのが2パーセントなんです。コットンやウール、ポリエステル、そういう素材を日本で作っているのものはほとんどない。つまり、海外との繋がりがないと作ることができないものなのです。

縫製は、人の手が入らないとどうしてもできない作業なので、どんどん人件費が安い国へ行ってしまいます。だから日本で縫製しているところは本当に少ないのです。国内外問わず、縫っている人が買い叩かれてしまうという事実が起きているんですが、これまではそこがブラックボックスのようになって見えていなかったんです。服は本来、日常に喜びをくれるものなので、作られる過程でも、作ってくれている人に対して負担を押し付けていないかということも含め、「ファッションって楽しいものだよね」と考えるのが、エシカルファッションの考え方だと思っています。

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エシカルとは自分が誇りを持って語れるもの



 

Spring Step : 着る人も作り手もハッピーでいる、エシカルファッションを実践するには、やはりエシカルファッションを売っているお店で買い物をすべきなのですか?


安里紗さん :  エシカルファッションを実践するって?と考えてください、というと、エシカルファッションブランドのものを買うこと以外にチョイスがなさそうに見えますが、古着を買うことも一つ選択肢としてあります。古着は1着を長く着るわけで、服の寿命を長くすることができます。飽きた服を捨てずにリメイクするとか、アップサイクルするとか、私はよく染めに出すのですが、汚れても捨てるのではなくて、染め直して着ることで、1着の寿命を伸ばしています。

 

他の選択肢としては、例えばファストファッションのブランドで買うときにも、「これは長く着るだろうか?」ということをまず自分に問いかけること。安いからといって飽きたら捨てるのではなく、長く着続けることができるかどうか、買うときに自問自答することもアクションのといっても良いと思います。


エシカルファッションとはなんですか?と聞かれると「誇りを持って語れるもの」と私は答えています。

エシカルファッションというと、そこには様々な要素があって、環境への配慮、人権の配慮、国産を守る、など様々な正義があります。その服1着の中に、それが全部詰まっているとは限らないわけです。その中で自分は何を譲れないのか、自分が何を選択するのか、環境だったり動物を守ることだったり、そういった思いを買い物に反映することではないかと思います。

また作り手も何を持ってエシカルか、という自社の判断基準を誇りを持って語れるか。売り手も買い手も自分が誇りを持ってそのものについて語ることができるか、これがチョイスの基準になると思います。

 

Spring Step :  自分の正義や本質の合うものを取り入れていくことは、洋服だけではなくて、食品然り、化粧品然り、自分が暮らしに取り入れていくもの全てに言えることかもしれませんね。そういったこだわりを語るというのはいいですね。

 

安里紗さん :  私は服から掘り下げていきましたが、自分が購入する物の作り手の思いや意図がどんどん気になるようになりました。そうすると、作った人、売った人の話を聞いて購入したものがどんどん増えていき、暮らしの密度がどんどん上がる感じがしていきます。また、納得感を高めていくことで自己肯定感を高めることにも繋がると思います。


Spring Step :  自分で納得したものに囲まれて、その環境で暮らしていくことは、自分の納得感を増やして、自己肯定感を高めることにもつながる、ということですね。


安里紗さん :  学生さんが就職先を選ぶ時ってものすごく真剣に考えると思いますが、例えば今日何を食べようか、何を着ようか、といったチョイスも自分の意思を反映するチャンスなのに、真剣に考えず、何となくで決めてしまっていることも多いと思います。もちろん忙しい時には、仕方がないけれど、日本は、衣食住すごく手軽な値段で買える環境で良いのですが、せっかく自分で選べるチャンスがあるのだから、納得するもので選んでいくことで、暮らしがどんどん面白くなると思うんです。暮らしの密度が高まる。


Spring Step : 安里紗さんは、そもそもどうやってエシカルファッションに興味を持たれたんですか?


安里紗さん :  もともと109で洋服の販売をしていました。それから洋服の企画の仕事をやらせてもらうことがあったんです。デザインができるわけではないので、こんな感じの服がいい、とイラストにしたものをベースに生地見本帳から生地を選んで、会社のパタンナーさんにパターンを起こしてもらい、中国の工場に送ると1週間くらいでサンプルが送られてくる、といった感じでした。絵を描いたものがポーンと本物になって返ってくるのを見て、「あれ? こんな風にものって作れちゃうの?」と何かすっ飛ばされている印象を受けたのが最初です。これが最初に持った違和感でした。

 

それから生産背景をきちんと明らかにしているブランドを探したところ、フェアトレードのパイオニアであるピープルツリーに出会い、そのイベントに足繁く通うようになり、そこで原料について色々と教わりました。最終的には、生産地にまで行かせてもらうことができました。

それはまるで、土地から生えてくるようにものができる、という感じでした。現地の人の技術、各国のピープルツリースタッフのアイデア、それがうまくまとまってものが出来ていくところを目の当たりにして、とても刺激を受けました。そして、ものが生まれるってなんて面白いんだろう! と感じたのです。でもそういった色々な過程をすっ飛ばしてものが生まれてきて、またそうしてできたものを販売する人も、購入する人も、その面白さを感じる間もないし、感じるチャンスがないことが残念に思います。


そこで「服の種」という企画をはじめました。参加者の方々にコットンの種をベランダで育ててもらっているのですが、5月に種まきをしたら、10月、11月に収穫して、紡績工場に持って行き、糸にしてもらい、生地工場で生地にしてもらって服を作るというプロジェクトなんです。そうすると、「服って植物だったんだ!」と実感してもらえるはず!

 

Spring Step : 「確かに! 服って植物!」


安里紗さん :  そうなんです。天候が安定しなければ綿はうまく育たない。そういうことにみんなでびっくりしたり、面白がったり。そのものを作る過程での面白さがたくさん詰まっていて、より深く味わえる気がするのです。その味わうためのセンサーを獲得していけば、買い物というアクション自体が面白くなるし、環境に負荷がかかるものは嫌だなぁとか、働く人が辛い思いをしているものは選びたくないなぁとか、そういうことってを自然に思うようになると思うんです。

エシカルとか、サスティナブルっていうと、余裕がある人がやるアクションのように思われやすいですが、もっと素朴な、もっと人が普通の感覚として普通に思うことをどうやって買い物やものづくりに反映するかということだと思います。

 

Spring Step : 確かに、遠い知らない国の他人事と思うのか、それを自分の家族が大変な思いをして作っていると思うのか、それによって違うように、その体験を通して自分事として捉えていくように思えるのかな?


安里紗さん :  私は運良く生産者と会ったり、生産地に行ったりして、「知る」だけではなく、ものづくりの面白さに出会うことができました。だからその面白さ共有したいと思うんです!


Spring Step : エシカルファッションを実践することで、環境が変わる、それ以上に自分のライフそのものが豊かになると言えますか?


安里紗さん :  そう思います。まず、自分自身の変化があります。袖を通した時に納得感があることは、自分を肯定することだと思います。その結果として、自然環境のインパクトや労働環境の見直しとか、お客さんが興味を持つことによって、企業が変わりやすくなります。そこにもダイレクトにつながってくると思います。世のため、人のためだけにやることではなくて、自分に返ってくること。

何かのために、誰かのために、志だけで続けていくことは難しいと思います。

 

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エシカルファッションを実践したいと思っている人に、はじめの一歩

 

Spring Step : これまでは自分の持っているものでステイタスを見せるような時代でしたが、若い人たちはそういったことを気にしていないように思います。そういう世代の人たちでこれからエシカルファッションを始めたいという人が最初に始めるとしたら、どんなアクションをお薦めされますか?


安里紗さん :  一番お薦めなのは作る経験をすることです。買う側が見ている景色と、作る側が見ている景色は全然違っていて、何かしら作る経験をする。染めるとか縫うとか、コットンを育てるとか。もしハードルが高かったら、いつも洋服を買っているお店の店員さんに、その服の生産地やどうやって作られているかを聞く。私は服を販売していた経験からわかるのですが、店頭でのお客さんの意見は、すぐ本社へ届きます。実際に店頭で「お客様は値段ばかり見ている」と報告されたら価格を下げることしか会社も考えないけれど、「最近素材のことをよく聞かれます」ともし言われたら、本社でその事を考えるはずなんです。


Spring Step : なるほど、確かに私も毎日店頭スタッフの日報読んでいます。お客様の必要としていることやリアルなことがよくわかります。


安里紗さん : リアルな話は、会社もすごく興味を持っています。別に問い詰める訳ではなくて、素直に気になることとして聞くことができればいいと思います。私自身、店員さんに聞いたり、もっと知りたい時にはインフォから連絡を取ったりすることもあります。みなさんとても丁寧に教えてくださいますし、そもそもそこに疑問を持つ人がいるんだ! ということを知ってもらうことができます。環境のことでも、アニマルウェルフェアのことでも、労働条件でも、気になることがあれば、デザインどうこうという話だけではなく、そこでも店頭でもその話をすること。


Spring Step : そういうことをお客さんから聞かれて回答していくことで、そもそも売る人の意識が変わりますよね。洋服の見た目と中身と、さらに付加価値をどのようにつけるか、それが生産の背景だったり、どうやって長持ちさせるかなど。


安里紗さん : 共感できる生産背景などを聞くと、もしかして購買の後押しになるかもしれない。


Spring Step : 環境に興味のない人でもそういう話に興味を持っているのかな?


安里紗さん : 繊維の商社でのアンケートで「環境に優しいものを買いたいですか?」という質問に対して、環境に優しいものを買いたいという回答が70パーセント以上だったそうです。まあそれは、意識が高いだけではなくて、良いか、悪いかというチョイスだったら、悪いよりは良い方がいい、というチョイスだとは思います。でもそのくらい、「そりゃ環境に配慮している方がいいよね」という思いはあるということなんだと思います。でもその次にみんな引っかかるのが、「それは本当に環境にいいの?」ということです。マーケティングとしてなのか、真摯にやっているのか、その見分けがつかないところで判断が難しい。

だから、企業側は、できてることだけを話すのではなく、できていないことと、それに向かってどんな取り組みをしているかという事を今後の課題として話すべきだと思います。その透明さが信頼を作ります。ありのままを語ってくれる企業を信頼するというのは、いろんなアンケートの結果からも見えました。


Spring Step : 企業に求められていることは、透明性なんですね。


安里紗さん : 例えば環境配慮素材100%にすると着心地が悪くなってしまうなどの理由で、意図的に比率を下げているいった、企業独自の判断基準とか、そういうことを教えてもらえたらいいなと思います。

 

これまでは、天然素材がよくて合成繊維が悪だというイメージが強かったんです。例えば、その製造方法によって環境負荷だけではなく、生分解性という点で、合成素材の繊維で作られたワンピースは200年も土に還らないとか。でもコットンの栽培に使われる水の量や、農薬や肥料の事を考えると、決してそれがいつも正解とは言えなくて、今のテクノロジーの進歩によって、植物由来で溶剤も環境負荷が少ない方法で作られて生分解性も高い化学繊維の生地も生まれています。

 

Spring Step : 安里紗さんがこれからやっていきたいことはなんですか?

 

安里紗さん : エシカルって何? って1つの正しい正解を求められることが多いんです。でも正解は、技術の進歩などで、どんどん時代と共にアップデートもされるし、個人の価値観によっても正解に幅があるものです。だからこそそれぞれの人が考える機会を作ることが大切だと思って、それを作り続けていきたいと思い、3人で起こした一般社団法人unisteps(ユニステップス)。もう一つはLittle Life Lab(リトルライフラボ)というオンラインコミュニティーを運営しています。洋服だけではなくて洗剤や化粧品の素材、わからないことがいっぱいです。暮らしの小さな実験室。ここでは暮らしの中でちょっと気になることを徹底的にみんなで掘り下げることをしています。

例えば、歯磨き粉を一つ選ぶにしても、自分で興味があって色々調べていても途中で途切れてしまうことが多いのですが、これをグループ研究にして掘り下げていくと、自分の判断基準も育ちます。

みんな仕事が忙しくて、暮らしのそういった疑問まで頭も体も割けないと思うんです。


Spring Step : 忙しいから、とりあえずこれ買っておこうみたいな簡単な選択肢ですね。


安里紗さん : そうなんです。その選択肢に納得しているわけではない。でも生活より仕事に時間を割かざるを得ない。そういう優先順位がある。そういった暮らしの判断は、自分にとっても、社会にとってもも大事なことです。みんなでゼミみたいにやっていて、育てていきたいです。

 

 

 

PROFILE

鎌田安里紗 Kamada Arisa /「People Tree」アンバサダー


1992年、徳島県生まれ。高校進学と同時に上京し、在学中にギャル雑誌『Ranzuki』でモデルデビュー。撮影などの活動を続けながら、2011年に慶應義塾大学・総合政策学部に現役合格。
現在は、同大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程在籍。衣服の生産から廃棄の過程で、自然環境や社会への影響を意識する”エシカルファッション”に関する情報発信を積極的に行い、ファッションブランドとのコラボレーションでの製品企画、衣服の生産地を訪ねるスタディ・ツアーの企画などを行
っている。著書に『enjoy the little things』(宝島社)。
環境省「森里川海プロジェクト」アンバサダー、People Treeアンバサダー、慶應義塾大学総合政策学部非常勤講師。

鎌田安里紗さんオフィシャルインスタグラム

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