【人生はDIY】「賃貸だから不自由」という思い込みを疑ってみよう 伊藤菜衣子 連載

Way of living Women's life Lifestyle
2021.05.06

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「賃貸は不自由だ」というのは本当なのか?

Text & Photo : Saiko Ito 

「ふつう」とされるロールモデルにフィットするように自分の人生を型にはめることが当たり前だと思っていることが多々ある。そんな空気にあらがって、自分の人生の理想のカタチを思い描いてはDIYしてきたけれど、一歩すすむごとに、また何かに囚われている自分に気がつくという繰り返し。


その「ふつう」ってどうやって生まれたんだっけ?誰が決めたんだっけ?そんなことが、どうやら人よりも気になってしまう暮らしかた冒険家 伊藤菜衣子の衣・食・住・家族・仕事などの「ふつう」を疑ってみたエピソードを毎回紹介します。


初回は、10年で3回の家づくり、4軒の家に住んだ、わたしの住まいのことを紹介しつつ、巣ごもりをどう快適に過ごすかのヒントになるような賃貸住宅でできるDIYと模様替えを紹介しようと思います。これまでのSpring stepの働き方新居のエコハウスのことも、ぜひ合わせてご覧ください。

 

 

わたしの中にあった「ふつう」のひとつに、「賃貸は不自由だ」というのがありました。しかし昨年、新居を建設中に住んでいた賃貸マンションで、逆にどこまでDIYできるんだろう?そんな好奇心が湧いたのです。


わたしの歴代の家は、「窮屈な賃貸に縛られるのはいやだ」と大家さんと原状回復義務なしの契約を結び、自由にリノベーションしてきたので、ある意味、契約後は何も考える事なく好きにDIYしながら過ごしてきました。

 

熊本の家

 

 

 

札幌の家

 

 

 

 

このような家々に住んだ後の一般的な賃貸は、1年弱の仮住まいとはいえ、さぞかし不自由で切ないものなのだろうと思い込んでいたのです。

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まずは現在のルールを把握しよう

「賃貸は不自由だ」の思い込みが生まれた背景には、元々は大家と入居者の責任の線引きがあいまいで、退去時に敷金の返還をめぐるトラブルが多かったことにありそうです。その問題を解決すべく、1998年に国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公表しました。


詳しくは、SUUMOでの解説をぜひ。

https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/chintai/fr_other/chintai_genjokaihuku/


ガイドラインの中で、家のビジュアルを自分らしくすることに関係することは


✔︎壁は、画鋲の跡は入居者負担にならない。釘やネジ穴は入居者負担になる

 →画鋲穴サイズならばOK

✔︎日焼けで色が変わった場合は入居者負担にならない

 →ポスターを貼ったりして色むらができてもOK

ということで、画鋲は進化しているし、大掛かりなDIYじゃなくても、できることがたくさんあるんだなぁ!と目から鱗が落ちました。

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好きなものが見える空間をつくってみよう

非常事態宣言が出た去年の春、仮住まいのマンションでこんなことになるなんて…と不幸のヒロインのようなメンタルに陥りました。新居への引っ越しまでの1年弱は、必要最低限のダンボールのみを開梱して、ミニマムに暮らそうなんて思っていたけれど、方針転換。どんどん好きなものを出しました。長引くコロナ禍で同じような気持ちで過ごしている方も多いと思うので、気分を明るくするための、DIY(厳密には模様替え)を少し紹介させてください。

 

●アート作品+グリーンは最強

 


リビングの正面の壁はコンクリートで、画鋲が刺さらなかったので、りんご箱で台をつくって、その上に友人のシルクスクリーンの作品を乗せてアイキャッチをつくりました。ひとまず、目立つところにアート+グリーンを置くと、手前の雑多さはひどいものですが、何とか映えるようになるものです(笑)。日本ではアートを買ったりする習慣はあまりないし、買い方もよくわからないですよね。そんな経験から、友人のアート作品をオンラインショップで販売させてもらっているので、よかったらのぞいてみてください。

 

 

●子どもの描いた絵は額装する

何気なく子どもが描いた絵も額装するとそれらしくなります。1枚で物足りない場合は、

何枚かの絵をコラージュしてみたり。ちなみに、絵を額装して飾ると、子どもの自己肯定感が上がるという話をきいたことがあります。


●フライヤーやポストカードはマスキングテープで貼る

この範囲に貼るぞ、という区画を決めて、マスキングテープなどで四角く囲ってからその内側に貼っていくのが規則性ができておすすめです。


●間接照明は部屋の雰囲気を格段に良くする

コード状の照明は、お手頃価格なものも多く、一気に雰囲気がある部屋になります。ちなみにこれは、カーテンレールに紐をかけて、結んで取り付けました。日本の家は、間接照明の文化があまりないですが、例えば天井に付いている蛍光灯が変えられなかったとしても、寝る前だけは、間接照明などにしてみるだけで、ぐっと家が特別な場所になるのでおすすめです。

 

 

●石膏ボード用フックがすごく便利

ドライになった花を引っ掛けたり、箒やエコバックをかけて置くのにおすすめです。好きなものは見せて収納するのが、わたしは好きです。


●ふきんはマグネットで冷蔵庫に貼り付ける

ふきんの色や柄にこだわるとメカメカしい冷蔵庫もいい雰囲気面積が増えて、緩和されます。

 

 

●ベランダには派手な布とグリーンを

観葉植物や家庭菜園、あとはドライフラワーをぶら下げたりしていました。高さに変化をつけると見栄えがいいので、木の箱やハンギングバスケットなどを活用するのがおすすめです。奥にあるユーカリのドライをかけてみると、配管の存在感が緩和して、グッといい感じになりました。ドライフラワーは跡が残らないタイプの両面テープのフックを使いました。

 

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自分のテリトリーをカスタマイズすることは 自分を見直すことだった そして「賃貸も自由」かもしれない

こうして、好きなものを並べていくと、自分の好きなものの傾向もわかるし、それに合うもの、合わないものもわかるようになってきます。どっちも好きだけど合わないな、というものは別室で飾ったり、自分の好みを把握してくことで、好きだけどいらないものが見えてくるのもいいなぁ、と思っています。また、自分のテリトリーをカスタマイズしていくことは、自分がどんなひとなのかを見つめ直すきっかけにもなると思っています。この10年で今の家は4軒目ですが、その度に「あぁ、わたしはここが変わったんだな」と気がつくことがよくあります。

 

現在の岡崎の家

 

 

 

 

そんな機会を、「賃貸は不自由だ」という思い込みで、みすみす手放しているのだとしたらもったいないなぁ、と思うのです。貼ってはがせる壁紙や、画鋲のようなもので設置できる棚、置くだけのフローリング材など、賃貸向けのプロダクトは案外たくさんあって「賃貸も自由」と思うかどうかは、自分次第なのかもしれません。「ふつう」は進化していて、それに気が付いていないのは、わたしたち自身なのかもしれません。

 

以上、「賃貸もけっこう自由だったよ」というエピソードでした。お出かけがしにくい今だからこそ、自分の家をナイスな空間にアップデートしてみることをおすすめします。この記事を読んでくださった方は、わたしの専門は家づくりかインテリアコーディネーターなどと思うかもしれません。でも次回は、おそらく家とは関係のない暮らしにまつわることをテーマに、思い込みを疑ってみようと思っています。どうぞよろしくお願いします。

 

 

PROFILE 

伊藤 菜衣子 SAIKO ITO 

「未来の“ふつう”を今つくる」をモットーに暮らしにまつわる違和感をアップデートし、言語化を試みる。SNSとリアルを泥臭く奔走し未来の暮らしを手繰り寄せていく様を、坂本龍一氏は「君たちの暮らしはアートだ」と評す。冒険で得た気づきを書籍、映画、アート、企業の広告制作など様々な方法でアウトプットしている。

 

10年で3軒の家づくりを経験。その経験を生かして編集と執筆を手がけた「あたらしい家づくりの教科書」「これからのリノベーション-断熱・気密編」(共に新建新聞社)などがある。

 

メディアプラットフォーム「note」にて「#人生とは自分にかかっている呪いをひとつひとつ解いていく冒険」にて結婚や子育てを通して感じるジェンダー問題やコンプレックスに向き合う赤裸々なコラムを連載中。最近の人気記事に「34歳バツイチ子持ち、マッチングアプリでハイスペ男子(現夫)と付き合うまでの一部始終|都合のいい女にならないと結婚できないという #呪いを解く冒険」がある。 https://note.com/bouken_life/

 

Instagram @saikocamera

 

 

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