【人生はDIY③】「母は強い」という思い込みを疑ってみよう 伊藤菜衣子 連載

Way of living Women's life Lifestyle
2021.11.18

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思い込みを疑ってみよう

Text & Photo : Saiko Ito 

 

「ふつう」とされるロールモデルにフィットするように自分の人生を型にはめることが当たり前だと思っていることが多々ある。そんな空気にあらがって、自分の人生の理想のカタチを思い描いてはDIYしてきたけれど、一歩すすむごとに、また何かに囚われている自分に気がつくというのを繰り返しています。

 

その「ふつう」ってどうやって生まれたんだっけ?誰が決めたんだっけ?そんなことが、どうやら人よりも気になってしまう暮らしかた冒険家 伊藤菜衣子の衣・食・住・家族・仕事などの「ふつう」を疑ってみたエピソードを毎回紹介します。

 

わたしの近況ですが、7年ぶりに出産して約2ヶ月が経ちました。前回とはあらゆる環境(住む場所も夫も)が変わったこともあり、あのとき心身を襲ってきたパニックのことを冷静に見直すことができています。そして、ずいぶん思い込みに捕らわれて無理をしていたんだな、と気がついたことを書いてみます。誰かの産後が少しでも楽になりますように。そして、未婚でも既婚でも多くの方の、結婚観や家族観をDIYするヒントになりますように。

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「母は強い」というのは本当なのか?

 

そもそも「母は強し」とは「レ・ミゼラブル」で知られる19世紀の文豪ユゴーの言葉。原型は、「女は弱し、されど母は強し」なのです。そもそも弱いものである、という前提が、すっ飛んで、強いところだけが残り、よく耳にしているようです。

 

前回の出産は「母は強いから大丈夫でしょ?」みたいな圧を、他者から感じただけでなく、自分の中から湧き出るものもかなりあって、過剰に責任を背負ってしまった気がしています。だけど「母部門は強いですが、ベースにあるわたしは弱いですよ。」というスタンスでいればよかったのでは?と第一子の産後数年経って、思うようになりました。

 

 

クーファン、ベビーベッド、バウンサー、呼吸センサー、粉ミルクなど、育児負荷が減りそうなものはいろいろ試してます

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どうして母が強くならなければならなかったのかを観察してみる

 

母を見ていて感じるのは、彼女が強くならざるを得なかったのは、男は仕事、女は家事・育児という分業制の中で、ワンオペ育児が当たり前だったからかなぁ、と想像します。

 

さらには、仕事のひと回り、ふた回りくらい上のバリバリ働いている女性の諸先輩方を見ていると、夫婦の役割が変わらぬまま、さらに仕事もやって…というアクロバティックなことをしてらっしゃったりするわけで…。すごい、本当にハンパない…。

 

だから、「母は強いね」という状況は、協力者がいなかった(少なかった)、頼れなかったという状況が可視化されているだけなのかもしれないと考えるようになりました。

 

 

 

外出時の抱っこはなるべくパパに

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親の自己犠牲とジェンダーバイアスは、子どもを幸せにするのだろうか?

 

産後は心身ともにバランスを崩したり、夫婦関係に亀裂が入りやすい。それは、赤ちゃんの世話が大変という物理的なことだけじゃなく、思考回路が通常と変わってしまうからだったと、改めて自分とオットを観察していて感じました。それは、

 

①「母は強くならねばならぬ」「母の役割でしょ」というそれぞれが持ち合わせた固定観念

②子どものためにより良い環境をつくろうと自分たちのキャパシティを鑑みない

 

という2つの状態が発動するからです。

 

①は、「勝手」にがんばって空回っている母と、「勝手」に自分のタスクはないと思い込んでいる父という状況になりやすい。この普段以上に大きくなる温度差が大問題。それぞれの「勝手」を早期発見して、声かけしています。

 

②は、前回は理想論ばかりでキャパオーバーになり、離婚にまで至ったので、「子どもにとって良い環境」という視野をぐーーーんと広げて、夫婦がご機嫌に仲良くいれる状態がまず大事、という視点で取捨選択をすることにしています。

 

いつもは拗れないようなことで、揉めそうになったら、このどちらかを疑うのです。そして、「これは自分にできるよ」、「これはオットにやってもらいたいよ」、「どちらも無理だからあきらめよっか」のどれかに着地させていくのです。

 

この過程でも家事を手放すことに抵抗があったり、男性ばかりが子育てしていることを褒められたり、いろいろモヤモヤすることもある。だから「あぁ、ジェンダーギャップ指数156カ国中120位の不都合が、私の中にも、世間にも根深くあるなぁ」とちょっと客観的に観察しています。そうすると、産前産後に勃発するあらゆる不都合は、夫のせいではなく、社会のせいなんだ、と捉えられるようになりました。そして「夫 対 妻」ではなく、「夫婦 対 社会課題」で「わたしたちはアップデートしていこうね」という目標に向かう心強い同士という感覚が生まれたのです。

 

 

 

産後2ヶ月間は週5で1時間ずつヘルパーさんに家事をお願いし、週に1回ペースで産前産後の母親とくらしを支える専門家ドゥーラさんに来てもらって食事のつくりおきなどをしてもらった。

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母になってもわたしはわたしのままである

 

わが家の家訓のひとつに、母や妻、父や夫、子どもや兄など、肩書きによって役割を固定しない、というものがある。「母(妻)としてこれをちゃんとやりたいのに…」なんて気分になってアタフタしていれば「菜衣子ちゃんだから、やらなくてもい

わが家の家訓のひとつに、母や妻、父や夫、子どもや兄など、肩書きによって役割を固定しない、というものがある。「母(妻)としてこれをちゃんとやりたいのに…」なんて気分になってアタフタしていれば「菜衣子ちゃんだから、やらなくてもいいんじゃない」という夫のひとことで気が抜けることがある。あぁ、また役割に捕らわれて苦手なことまで背負おうとしていたわ…、とハッとするのです。

 

産後は自分の主語が「わたし」ではなく「ママ」である時間も圧倒的に長く、いつもとは違う思考回路に引っ張られがち。だけど、肩書きや子どもが増えようとも、わたしはわたしのままで、強くもなっていなくて、それを受け止めるしかないんだな、という結論に至りました。それは「パパ」も同じで、彼は彼のままで、体力も気力も家事能力もかわらない。そう、わたしたちは、わたしたちのままなのです。

 

 

 

たぶん元気不足なのだと思うけど、選ぶ花は彩度が高いものが多い今日このごろ

 

 

以上、「母になってもわたしはわたしのままだったよ」という近況でした。結婚してもしなくても、子どもがいてもいなくても、女でも男でも大変な世の中ですが、まずは肩書きに捕らわれない「わたし」の輪郭を探ってみるきっかけになれば幸いです。さて、次回は「結婚」の思い込みを疑ってみるコラムを執筆予定です。どうぞよろしくお願いします。

 

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PROFILE

伊藤 菜衣子 SAIKO ITO / 暮らしかた冒険家

 

「未来の“ふつう”を今つくる」をモットーに暮らしにまつわる違和感をアップデートし、言語化を試みる。SNSとリアルを泥臭く奔走し未来の暮らしを手繰り寄せていく様を、坂本龍一氏は「君たちの暮らしはアートだ」と評す。冒険で得た気づきを書籍、映画、アート、企業の広告制作など様々な方法でアウトプットしている。

 

10年で3軒の家づくりを経験。その経験を生かして編集と執筆を手がけた「あたらしい家づくりの教科書」「これからのリノベーション-断熱・気密編」(共に新建新聞社)などがある。

 

メディアプラットフォーム「note」にて「#人生とは自分にかかっている呪いをひとつひとつ解いていく冒険」にて結婚や子育てを通して感じるジェンダー問題やコンプレックスに向き合う赤裸々なコラムを連載中。最近の人気記事に「34歳バツイチ子持ち、マッチングアプリでハイスペ男子(現夫)と付き合うまでの一部始終|都合のいい女にならないと結婚できないという #呪いを解く冒険」がある。 https://note.com/bouken_life/

 

Instagram  @saikocamera

 

 

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