化粧品は「身土不二」、テロワールから語る時代へ。  安倍佐和子

Way of living Women's life Womens life Beauty
2022.06.23

Beauty Journalist/Editor 安倍佐和子

テロワールという言葉を耳にしたことはあるでしょうか? ワインやコーヒー、お茶などの品種や特徴を表す際に使われることが多いのですが、もともとは「土地」を意味するフランス語TERREから派生した言葉。その植物がどんな気候や風土のもとで、また、どんな土壌で育まれたのか、歴史や個性、そのすべてを鮮やかに表現する、美しく奥深い言葉です。

 

 じつはこのテロワール、このところ、化粧品の個性を語るうえで使われることが増えています。これまでは、配合された植物成分が、クリーンでサステナブルであることを、オーガニック認証や自然由来指数等で伝えるのが主流でした。でも最近は、今まで以上にプラネタリーヘルスを尊ぶコミットメントを開示。化粧品の原料も口に入れるものと同じように扱っていること。化粧品に配合する植物由来成分は、地球の未来を見据え、土壌そのものから監理。よりピュアでクリーンであることの証明として、テロワールを謳うブランドは、農園を自ら所有し、植物原料確保のために、土壌開発にも深く携わっているのです。

 

 このムーブメントを牽引するのが、フランスの大手化粧品メゾンです。世界有数の植物の産地に自社農園を所有し、その土地や気候風土を知る植物学者や研究者、現地の人々とともに栽培管理を遂行。農地を拡大しながら、実際にテロワールを生かした植物成分の抽出に成功、配合した製品を誕生させています。

 では、日本ではどうなのかというと、小さな規模のブランドから少しずつ、テロワールを謳う製品は増えています。ただ、有機栽培に適した農地を確保し、栽培から抽出まですべてを手掛けるには、超えなければいけないハードルがまだまだ多く、大手が着手しない限り、残念ながら、大躍進は期待できそうにありません。だからといって、いつまでものんびりと構えているわけにはいかないのも現実で。世界的なパンデミックや、世界秩序を無視した軍事侵攻によって、食糧危機さえ叫ばれるいま、他国に頼らない地産地消の概念は、よりリアルな問題になりつつあるのですから。

 

 猫の額ほどの自宅の庭に植えた夏野菜を眺めつつ、個人レベルでなにができるのか、思い倦ねることもしばしば。できることなら、テロワールという美しい響きのまま、その概念が定着するほど大きなうねりとなって欲しいもの。だから、まずはプラネタリーヘルスと向き合うブランドを応援するところからが第一歩。テロワールとは、日本に古くから伝わる「身土不二」の精神そのものだと思うからです。

 

PROFILE

 

安倍佐和子 Sawako Abe/ビューティエディター、美容ジャーナリスト

化粧品会社、出版社勤務を経て独立。日本初の美容月刊誌の創刊に関わり、ビューティエディターとして活躍。現在は女性誌や美容誌で編集・執筆活動を続けるほか、広告、化粧品マーケティングなど幅広い分野で活躍。JPHMA認定ホメオパス、フィトテラピーアドバイザーの資格を持つ。著書に「安倍佐和子のMy BEAUTY Rules 人と比べない美人力の磨き方」(講談社)がある。

Instagram:@abesawakobeauty

雑誌:

VOCE, MAQIUA, Figaro Japon, ecla, GINZA, Presious, 25ans, mi-molet, BAILA etc.

広告制作:

HELENA RUBINSTEIN, SHISEIDO, WAPHYTO, POLA, TATCHA, BRILLIAGE  FLOWFUSHI etc.

テレビ:

テレビ朝日「BeauTV VOCE」新作コスメ紹介  2010年~2012年

 

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