【コスメのトレンドキャッチャーに聞きました】これから世界のコスメはどうなりますか?

Beauty Organic Lifestyle Green Tech Special Interview
2018.07.05

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世界の女性はオーガニックコスメに移行している

TEXT / Mamiko Izutsu 

Spring Step : ローレンスさんは世界の化粧品ブランドの動向を常にリサーチされていますが、最近のオーガニック系ビューティのトレンドを教えていただけますか?

 


Laurence : 昨今では、特にアメリカを中心に、非常に自然派またはオーガニックの製品が増えています。ただ、スキンケアアイテムにおいてはその傾向が顕著なものの、メークアップアイテムに関しては、まだまだというところ。そのため9月にはまた6月~9月の間にどれだけ自然派系アイテムが進化しているか、新しいリサーチを行い、情報をアップデートしようと思っています。

 


Spring Step : 日本でのオーガニックは、それが大切なことだからというよりも”オーガニックを使うこと=ファッション”になっているんですよね。そのため、まだまだ作り手と消費者の意識のギャップがある気がします。世界の化粧品情勢を鑑みて、日本の外では何が起きているのか、聞かせてください。

 


Laurence : 世界的に言えることは、消費者動向が変わってきているということですね。2年前にロハスというと、環境のためという風潮が大きかったですが、現在の消費者はナチュラル志向の製品を、自分と自分の健康、そして彼女たちの周囲の人のために商品を選んでいるんです。そしてそれが「自然と地球に良いものならば、さらにいいじゃない」と。ただしその考えが中心にあるのではなく、あくまでも関心事項は「自分のため」。自分にとって「害のない」、ヘルシーなものを選びたいんです。

ナチュラルで健康に悪い影響を及ぼさない製品を欲している消費者は40~50%ほど存在しており、世界的にも高い需要があると言うことを示しています。これは中国や韓国を含めたアジアでも同じです。

 


特にこの成長が著しいのはスキンケアにおいてで、メークアップでは1%程度のところが、スキンケア製品ではおよそ10%伸びています。例えばDr.Hauschkaは非常に売り上げが伸びていて、30%成長を記録したほど。このように爆発的な現象が起きていることが、アメリカのリーディングブランド等を焚き付けており、「認証があるかないか」と言う点も問題になってきています。Cosmos(コスモス)やEcocert(エコサート)といった認証を得るためには、ポジティブリスト(使用可能な成分)*のみを使用するなど当然一定の基準に達することが必要であり、ある程度の制限や倫理点をクリアしなくてはいけません。とはいえ、20%のオーガニックの原料を最低限使用すればオーガニックを謳っていいわけです。それゆえ、一口に「オーガニック」と言っても、消費者には見えにくい部分もあります**。

*認証のために使用可能な分子リスト。その反対に使用不可能な分子のブラックリストもある。

**オーガニックの認証を取得している製品はオーガニック原料の含有率の記載が必須。

 


さらに、ヨーロッパには多くの基準がありますが、アジアには全くありません。アメリカには食品にひとつ、日本も食品にひとつありますが、きちんと守られていないためあまり参考にならないですね。

 

ISO基準*の導入でラベル統一化が図られるかと思いましたが、結局のところISO基準は大手ブランドが自身の可能性を広げるために作られただけなので、全く意味をなしていません。シリコンやOGM(遺伝子組換え)など、粗悪な成分が使用されていても「ナチュラル」をうたうことはできるんです。でも消費者にはわからないので、だからこそ人々は、安全性を約束してくれるインフルエンサー、クリエイターたちを信頼する。また、フランプリやモノプリといった大手スーパーまでもが、ナチュラルとオーガニックのコーナーを作ったりするわけです。皆「私はナチュラルでオーガニックな製品を選んでるわ」と言いたいんですよね。

*ISO とは、スイスのジュネーブに本部を置く非政府機関 International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称。2016 年 よりナチュラル、オーガニックの新規格 ISO 16128が発行されている。

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アプリで消費者が製品の実体を知る時代の到来

 

Laurence : そう言った「欲しいけれど何を選んだらわからない」と言う人たちの需要を受けて、スキャンすると含まれている成分の良し悪しがわかるアプリケーションやラベルなどが、様々に登場しています。フランスでは、原材料のリストをスキャンして解読できる“Clean Beauty”と言ったアプリが人気ですし、アメリカの組織EWG*も急成長していて、韓国のブランドでもEWGラベルが多く取り入れられています。こうしたツールが増えて、消費者が成分に何が取り入れられているのかわかるようになり、「こんな危ない成分が入っているものは買わないわ」となれば、ブランド側もうかうかしていられなくなるでしょう。現在はそんな、消費者が自分で全てを見極めるようになるであろう、大きな変革が起きている時期と言えます。

*アメリカのNPO環境団体Environmental Working Groupの略

 


他にも、アメリカを中心に動物への虐待フリー、そしてヴィーガン主義というムーブメントが非常にブームとなっています。私にとっては全てのそう言ったラベルがパッケージに載る必要があるのかはわかりませんが、大切なのは透明性であり、消費者が迷って、自分の選択に自信を失わないようにすること。今私たちは、そんな変化の真っ只中にいるんです。

 

Spring Step : 確かに、自分の健康にいいものなのか、スキャンして内容を知りたいですね。化粧品とは夢を売るものですが、私にとっては、使って心地いいとか、テクスチャーが柔らかいなどの効果も大事だと思うんです。

 

Laurence : もちろん! ビューティーは身体の内側と外側から働きかけるものというのが、もはやどこの国でも基本になっていますね。

 

Spring Step : そこでまた先ほどおっしゃっていた、健康と健やかな生活を通じて幸せを模索するという、自分を中心とする考え方に戻りますね。

 

Laurence : その通りです。特にミレニアム世代では、自分にいいものをと考える消費者が多いのですが、それだけでなくアレルギーなどの問題も理由に挙げられます。女性においては、大手ブランドの製品とオーガニック製品を取り混ぜて使う人が多いですね。というのも、期待に沿うものが見つからず妥協せざるを得なくなったり、全て自然派だとつまらないと感じたりしているから。ブランド側においての問題は、そこをいかに改善するかでしょう。先日も化粧品原材料展示会に行ったのですが、以前にも増して多くのサプライヤーが、面白い自然派の素材を出してきていました。まあそうはいっても、まだまだシリコンのように使い勝手のいい素材と入れ替われるほどのものは少ないのですが。何はともあれ、消費者、そして原材料の変化が一緒になって行くことで、新しい化粧品の時代がやってくると思います。

 

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オーガニック化粧品は進化している

 

Spring Step : 6年前には、今ほどたくさんのオーガニックショップはありませんでした。つまりその分、自分たちが食べるものや使うものに気をつけている人が増えているということだと思うんです。

 

Laurence : Yukaというアプリケーションは知ってますか? バーコードをスキャンすると製品のすべての成分リストが出てくるもので、そこに何が含まれているかという情報についてと、そのヘルシー度合い、また代替できるものを教えてくれるんです。

 

 

 

先ほど挙げたClean Beautyのアプリと同様、こう言ったアプリケーションは商品購入の過程に革命的変化をもたらすもの。そして製品を分析して、何が悪いか、他に使うなら何かといった提案をするインフルエンサーも出てきました。

 

Spring Step : インフルエンサーが重要なポイントなどを教えてくれるというのはありがたいですね。

 

Laurence : インターネットにはDetox et moi というプラットフォームもあって、そこでは、製品の謳っていることが本当に正しいか確かめられるんです。創設者曰く、インフルエンサーの中には偽のオーガニックインフルエンサーもいるので、気をつけたほうがいいと言っています。

 

 

Spring Step : オーガニック製品に関しては、フォーミュラやテクスチャー、効果などにおいて進化していると感じますか?

 

Laurence : 毎年、はっきりとした違いを感じますね。例えば先に挙げたDr.Hauschkaですが、すべてのメークアップラインを刷新した6ヶ月前の新ローンチでのファンデーションは感触が驚くほど良くなっていました。すべてのラインにその変化があったことで、昨年の30%成長を達成できたのだと思います。同じように、私は原材料サプライヤーとブランディングして製品づくりのコンサルティングもしているのですが、つい最近、オーガニックでない市場水準クオリティと同等のファンデーションを、オーガニック素材を使用して作り上げることができたんです。それぐらい今は、どんどん進化しているということです。

 

Spring Step : そうなると、さらに市場に人が増えて、よりオーガニック技術が向上して行くでしょうね。

 

Laurence : その通りです! 実際、シリコンのサプライヤーからは、逆にどんどん受注が減っているとも聞いています。シリコンの問題は、分解性(土に還らない)がないこと。人にとって良くないだけでなく、地球環境への影響という意味で非常に良くないんです。ただ、シリコンなしでシャンプーを作るのは今だに複雑で難しいんですよね。もうひとつ大きな変化として、それまではパーム油フリーのものはほとんど見つかりませんでしたが、現在は数多く製品が出てきています。これも非常に重要な変化だと思います。

 

Spring Step : ただ問題は、ブームになると皆が飛びつくことですよね。例えば、大流行のココナッツオイルは、誰がそれだけの需要に対応するの?という話になります。

 

Laurence : まさにそれが問題で、ブランドは生態系のことまでをきちんと考えて製品づくりをしていかないといけないと思います。方向性が正しくても、供給源である材料を枯渇させてしまうようでは意味がありませんから。

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世界の化粧品を見つめるLaurenceの提案するStepとは?

 

Spring Step : オーガニック市場は発展して行くと確信をお持ちですが、これは単なるトレンドでしょうか? それとも定着するものでしょうか。

 

Laurence : 長い目で見ると、定着して行くと思います。大手ブランドの様子を見ても、そうなるように私には思えますね。

 

Spring Step : 最後に読者の方達のために、今日から始められる良いアドバイスというのを教えていただけますか?

 

Laurence : 若い人にお伝えするなら、髪のケアのことでしょうか。オーガニックのピュアなもの、例えばヘアオイルやバームを使ってみたら、その良さがわかるのではと思います。既存のブランドに比べると、オーガニックブランドでは原材料もあれこれ使っていないミニマルなものが多いので、よりリアルな効果が実感できるのでは。

 

Spring Step : 全く同感です! 日本では植物オイルが今トレンドとなっているんですが、以前はドライオイルばかりでした。植物オイルはとても良いので、このトレンドが定着してくれたら、と。そういった体験から、だんだんみんなが「いいものには、沢山の材料は必要ないんだ」と理解してくれるといいですね。

 

Laurence : その通り。ミニマリズムこそが大切だと思います。

 

PROFILE 

Laurence Caisey ローレンス・ケゼイ / マーケティング&リサーチ会社「BOOSTINNOV」創設者。20年以上もの間、日本や韓国といったアジア市場のメイクアップに特化した情報をクライアントに提供してきた、ヨーロッパにおけるアジアンビューティ情報の第一人者。その幅広い知識をもとにビューティ市場のトレンドを予測、プロダクト開発からブランディング、コンサルティング業務まで幅広く手がけている。www.boostinnov.com

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