フランス式アロマテラピーについて、教えてください。

Beauty Organic Lifestyle Special Interview
2018.10.18

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そもそも、アロマテラピーって?

Text: Mamiko Izutsu /Photo: Spring Step

Spring Step:  栗栖さんに監修して頂いたSpring Stepのアロマディクショナリーは、各方面から「こんな機能まで搭載しているなんてすごい!」という声をたくさん頂いています。大変評判のいいこのディクショナリーを、もっともっと読者の方々に活用して欲しいと思っているのですが、まず基礎から再確認として、アロマテラピーとはどういったものなのでしょう?

 

栗栖 智美さん(以下 栗栖さん):  ある植物の香りの成分、それも薬理効果のある成分がぎゅっと1本の瓶の中に濃縮されているのが精油です。この精油を使うことにより、日々の身体の不調といったものを、病院に行く前に改善することができる民間療法、と言えばわかりやすいでしょうか。私はアロマセラピーのセミナーやレッスンなども開催していますが、医療従事者ではありませんし、あくまでもセルフケアでの使い方を守りながら、お医者さんにかかる前に風邪などをなかったことにしてしまう、そのためのツールだと考えています。

 

Spring Step: 日本では、アロマや植物というとどこか“ふんわり”したイメージになってしまっているんですよね。本来の化学的な薬理効果についてはあまり知られておらず、「アロマ=いい香り」だと思っている人が多い気がするのですが、精油はなぜ効能があるんですか?

 

栗栖さん: 精油は植物から取れるんですが、植物は私たち人間を癒してやろうと香りの成分を作っているわけではなく、それはあくまでも自身の身を守るため。植物は動けないので、外敵が来た際は、嫌がる匂いを出して虫を遠ざけたり、侵入してきたウィルスに対抗するために抗菌成分を出したりします。そういった成分を蒸留という形で、1本の瓶の中に詰めたのが精油なんです。つまり、植物が自分の身を守るため、繁殖させるために出す植物のホルモン的なものや抗菌成分が、人間の身体にも効果的に働くわけです。それも、例えば真正ラベンダー精油でいうと、蒸留という手法で採取された成分は、植物1kg分に対してわずか10ml程度しか取れないほど濃縮されているので、そのパワフルさもあると思います。

 

Spring Step: なるほど、蒸留することで、植物がもともと持っている特徴や成分がその液体の中に入り込み、それが人間の身体にも働くので、薬理効果があるんですね。栗栖さんは最初、なぜアロマに興味を持たれたんですか?

 

栗栖さん: 私がアロマの世界に入ったのは、フランスの水が合わず皮膚がものすごく荒れ、湿疹ができてしまったのがきっかけなんです。一年半ぐらい原因がわからず、その間はそれこそ食べ物をオーガニックに変えて、マクロビ食にしたり、ヨガや運動をするなどいろんなことを試しました。もちろんお医者様にも行きましたが、処方される薬は効かず。特に唇が荒れて、皮がむけて真っ赤になり、痒くて仕方がないけれど何を塗っていいのかわからない。そんな時、日本から持ってきていたアロマの入門書を見て、ミツロウにラベンダー精油を入れたリップバームを作って塗ってみたところ、劇的な変化があった。そこで「香りだけだと思っていたのに、何これ!」と思い、もっと知りたくなって勉強を始めました。学校などで習ううちに、他にもいろいろなことが精油でできると知り、風邪や下痢、便秘、月経痛といった不調時にちょこちょこと使ってみたんです。変化のないものも中にはありましたが、使う前よりもずっと症状が改善するものもたくさんあって。ただ、私は最初からフランスでしかアロマを勉強していないのですが、フランスだと香りは度外視なんですよね。

 

Spring Step: 日本ではアロマと言えば香り、のイメージなのに!

 

栗栖さん: アロマを日本で勉強すると、スプレーやキャンドルといったものを作りながら勉強するんですよね。でもフランスでは香水産業がちゃんと確立しているので、ルームスプレーが欲しかったら、出来上がっているプロダクトを買えばいいじゃない。その方が安全な基準で、上手に作ってあるんだから、わざわざ自分で作らなくても……みたいな。フランスのアロマはがっつり化学、という感じなんです。

 

Spring Step: 日本とフランスでは、同じアロマといっても内容がかなり違うんですね。

 

栗栖さん: 日本とフランスではアロマの捉え方がすごく違うなと思います。日本ではリラクセーション目的で、フランスでは日々の不調の改善目的で行われています。日本でアロマをしている人にとっては「フランスのアロマはやり過ぎ……」と思われることが多いかもしれません。でも、症状の改善を目的としているので、改善したら使用をやめる。毎日使っているわけではないのです。フランスは国民性的に「自分で責任を取るなら何をしてもいい」という考え方があり、精油を飲用するレシピなどもあります。もともとフランスのアロマは、お薬が発展する前にお医者様が使っていた歴史があり、そのため高濃度での使用や飲用が行われていたのです。ただ現在では、その「医師の監督下」という部分がなくなってしまい、レシピだけ残っている状態。そのため、フランスのアロマの先生たちの間でも、危ないのでは?と話されています。私も、飲用はせず、濃度も MAXで10%前後というのを守ってくださいとお伝えしています。30%、50%の高濃度を提唱する本もありますが、10%程度が、効果もありつつ危険が少ないとされています。そして初心者の方には、とにかく使いすぎないで!と伝えたいですね。安全なところから、少しずつ、ほどほどに。ただ、日本で推奨されている1%濃度では、セルフケア目的では正直それほど変化がない。私はパリでレッスンも行っているのですが、日本で学んで、逆に疑問に思い私のところに来た、という人も結構います。

 

Spring Step: 確かに、すごく効果がある!という感じではないのに、なぜ日本ではこんなに流行っているのだろうとは思っていました。

 

栗栖さん: そうなんです、それでレッスンで作る10%濃度のバームを使ってみると、ピタッと風邪が悪化せずおさまったとびっくりされます。私の中でアロマって、時と場合、ものすごく限定された時に、きちんとした濃度でパッと使って、そして良くなったらすぐにやめる、というものなんですよね。

 

Spring Step: 薬と一緒ですね。

 

栗栖さん: フランスも日本もそうですが、精油は雑貨扱いで医薬品ではないんです。だから販売する側もサプリのような言い方のみで、どれくらいの量を何日間摂ってくださいと言った薬のようなことは書けず、曖昧になっている。でもそれで危ないからと1%に抑えてしまうと、せっかくの素晴らしい精油の力は発揮されず、「アロマを使っていて素敵」で終わってしまう。その点ディクショナリーは、私のオリジナルレシピですが、フランスのアロマで学んだことがベースとなっているので、フランス人が精油で不快症状を改善する場合と同じように、きちんとした濃度を取り入れています。症状が出た時にパッと使い、改善したらすぐにやめる。そうした使い方をすることで、アロマテラピーの新しい一面を味わえるのではないかと思います。

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アロマテラピー、驚きのその効果

 

Spring Step: 栗栖さんがアロマを使う中で、そう言った効果を実感された時はどんなでしたか?

 

栗栖さん: たくさんあるんですが、例えば娘が小さい頃中耳炎にかかった時。夜中に熱が出て耳が痛い……、朝まで病院にも行けない状態で。そこで精油を入れたキャリアオイルで耳の周りをマッサージしたら、30分くらいで熱が引いて、すーっと寝付いたんです。子供はまだ身体が乱れてないので、その変化たるや!「おおっ」と思いましたね。まずい!と思ったらその箇所に、適切な精油を1日3〜5回塗ってみると、大概は和らぐはず。もちろん、そこで翌日も悪化するようであれば必ずお医者様に診てもらってください。でも、翌日少し良くなっているのなら、それはアロマがいい働きをしてくれたということです。フランスのアロマテラピーは抗菌作用から研究が始まったほど抗菌力が強いものが多いので、風邪や中耳炎、ウィルスなどといった症状には、非常に適していると思います。そしてホメオパシーやハーブ療法などと何が違うかといえば、やはり香り。香りの癒し効果は非常に高くて、これもまた娘の例なんですが、悪夢を見て夜中起きてしまうことが続いたので、神経が落ち着く香りをブレンドし、背骨に沿ってマッサージをしてあげたら、毎晩朝までぐっすりです。そんなこともあるので、メンタルな心配事にも使えますね。

 

Spring Step: やはりアロマは香りの効果も高いんですね。

 

栗栖さん: ただ香りに関しては、その感受性も人それぞれ。日本では、ディフューザーは絶対安全!と思われていますが、私は実はディフューザーこそ、意外に高度な知識が必要だと思うんですよね。もしその空間にその人だけでなく、赤ちゃんやペット、喘息の人がいたりすれば、それぞれの禁忌となる成分が含まれた精油を抜かなくてはなりません。なので私は、常に香りがある状況をアロマで演出するよりも、ここぞというときにだけ使うのがいいと思っています。これからお客さんが来る、じゃあいい香りでお迎えしようというなら、何時間もディフューザーを焚き続けるのではなく、30分間だけにしたり、ピンポン!と鳴ったら玄関にスプレーをシュッとする。それくらいでいいと思うんですよね。精油はパワフルなものなので、その時間は良くても、それが積み重なっていくと大丈夫なのかな?と考えてしまいます。少量でも十分効果はあるので、あまり使いすぎないこと。それに、使いすぎなければすぎないほど、使ったときにはその変化を感じられます。私は知識を深めるほど、精油をあまり使わなくなってきました。私が目指す健康って、究極的には精油も何も使わなくても健康であること。ちょっと調子が悪かったら食事程度で調整ができる。それが、一番理想的だと思うんです。

 

Spring Step: 確かに、アロマが欲しい時って、弱っているときとか、疲れている時とか、そういう時かもしれませんね。

 

栗栖さん: 現代はさまざまな慢性疾患があって、下痢や便秘が続くとか、頭痛がするなど、原因不明なものも多いですよね。私はそれらの多くは、ストレスが一番の原因だと思っているんです。ストレスと一口に言っても、人間関係だけではなく、空気汚染だったり水質汚染など、環境なども含めた全部。不調を改善するには、農薬や化学調味料をたくさん使っている食品摂取を少し減らそうという意味でオーガニック食材にしてみるとか、一つずつ原因になりそうなものを減らして行かないといけませんが、その際に、香りで改善できたらいいなと思うんですよね。例えば香りは直接的には便秘に関係なくても、いい香りを嗅ぐことでリラックスできて、後々「あ、そういえば便秘がなくなったかも」というような。西洋医学のようにパッとは効かないけれど、でも逆に、使っていることで同時に食生活にも気をつけるようになったり、運動を心がけたりして、気がつくと症状も消えていた……そんなツールにはなるかな、と。

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アロマの使い方、そして注意点

 

 

Spring Step: 私は、今すごく気分をあげたい、覚醒させたい!というときに香りの力を借りたい時がよくあります。

 

栗栖さん: 私はパティ・カナックさんからアロマコロジーとして、フランスの医療現場でも導入し始めている、この精油を使うと元気になる、落ち着くという精油別の心理作用を勉強したんです。その内容を利用して、眠れないときはこれ、記憶力、集中力をアップさせたいときはこれ、という香りのブレンドを作ってスプレーしたりしています。あと、今日はこれを持ってきたんですけれど……(と、小さい容器を差し出す)。これは病院などでも使われているのですが、紙のフィルターが入っていて、そこに精油を垂らして、必要な時だけ嗅ぐんです。例えば、病院で痛みを訴える患者さんがいても、何の病気なのか、どう痛いのか、吐き気を伴うのかなどでも「痛い」原因は違いますよね。なので、その人それぞれに合うものを作って、渡しているそうなんです。

 

 

Spring Step: これはすごくいいですね! 確かに、香りをパーソナライズすると言っても、焚いてしまうとその人だけの香りではなくなってしまいますし。お薬として、自分に一番効果的なものを使うという意味では、非常に理にかなっていますね。

 

栗栖さん: そう、同じ人でも時間によって集中したい時があれば眠りたい時もある。でもディフューザーを一度焚いちゃうと、洗わなくちゃいけないじゃないですか(笑)。これなら、2本を持っていて「今はこれ!」という使い分けもできます。満員電車がストレスになるなんて人でも、これならすっと使えますよね。医療面ではもちろん、家庭でも、日常生活でも使いやすいなと思って。

 

Spring Step: これ、日本でも買いやすいんでしょうか?

 

栗栖さん: 日本にはどこかが輸入しているらしいんですが、まだ高いらしくて。フランスではAroma Zoneで売っているので、私の生徒さんたちはネットで注文して、日本に届けてもらったりしているみたいですね。

 

Spring Step: 薬と同じように考えた方がいいというアロマですが、何か他に注意点はありますか?

 

栗栖さん:精油はパワフルで、特に柑橘などは皮を絞っているので、それが皮膚刺激になる人がすごく多いんです。人によっては、柚子湯でもピリピリしたりしますが、精油だとさらに刺激は強いもの。日本の本には、精油を皮膚に垂らして肌に異常が現れたときは大量の水で洗い流すように、と書いてあるんですが、精油は水に溶けず油に馴染むので、精油を油で拭き取ってから石鹸で洗い流すのでないと、ピリピリ感が残ったままになってしまいます。それを知らなかった頃、半身浴の際、オレンジの精油を入れたところ、水面に触れていた部分がピリピリ痛くなり。見ると真っ赤になっていたので、水で流したけれど痛みもとれず、3日程火傷のようになってしまったんです。もちろん救急車を呼ぶような大ごとではないのであまり表面化していませんが、結構な人が精油の皮膚刺激は体験していると思います。

 

Spring Step: それは怖い! 精油は水ではなく、オイルで拭き取ってから、石鹸で洗い流す、が大事ですね。

 

栗栖さん: もうキッチンの油でもなんでもいいので、とにかく油で拭き取ること。もちろん肌に塗る時も、原液では塗らず、必ず希釈することが大事です。例外的に、ニキビなどには1%濃度では意味がないので原液でいいですが、面積が少しでもあるときは必ずキャリアオイルで希釈して。

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5本あれば、アロマはすぐに始められる

Spring Step: 注意点は守りつつも、いろんな方に家の薬箱のようにアロマを使ってもらえたらなと思うのですが、これはマスト!と言える精油は何でしょう?

 

栗栖さん: どんな家庭構成かによっても違って来るんですが、例えば我が家に置いてあるものでいうと、まずラバンジン。眠れない時や、虫刺されに使います。次にカモミールローマン。ストレス性の下痢や便秘、湿疹などにいいですね。精油としてはパワフルなので上級編にはなりますが、バジルもおすすめ。痙攣のときに最適なので、月経痛や、筋肉が引きつったときなどに私は使っています。あとはペパーミント。頭痛のときこめかみに塗ったり、車酔いしたら嗅ぐと楽になります。もう1本としては抗菌作用が高いものを持ちたいのですが、日本であればティーツリーがいいでしょう。私自身はタイムを使っていますが、日本ではタイムの精油が高価なので、入手しやすいティーツリーを。その5本があればベストですが、まずはラバンジンとティーツリーだけでも十分です。

 

Spring Step: では最後に、アロマを取り入れてみたいな、使ってみたいなという人へメッセージをお願いします。

 

 

栗栖さん: 私がアロマを取り入れるようになって感じたのは、意識が変わったなあということ。以前ならば、風邪を引いたら病院に行き、薬を処方され、でもこの薬は胃が荒れるからこの薬も……といって、たくさんの薬を買うことになってました。でも先に挙げた5本の精油で、意外といろんなことに対処できるんです。色々無駄なく使えることで、薬箱の面積がまず減りました。そしてその延長で、食べ物も皮ごと食べようとか、無駄に色々買わないように意識するようになりました。より植物や自然のあり方に近い生活になったらいいな、と。精油を取り入れましょうといっても、80本必要!というわけではなく、5本で大概何でも対応できます。その5本の中にお気に入りの香りがなければ、もう1本好きな香りを足して、生活上ストレスを感じた時にはその香りを嗅いでみたり。自分のお気に入りの香りがあるというのも、すごく生活が豊かになると思いますし。

 

Spring Step: さらにもっと「このトラブルには」を知りたい場合は、ディクショナリーのレシピを見る、ということですね。

 

栗栖さん: 市販されているレシピ集で、日本語のもので一番充実しているんじゃないかと自負しています。学校に入らないとレシピってもらえないんです、日本って。Amazonなどで買える本は初級編ばかりで、日々の不快な諸症状にこの精油をこのように使いましょうというのはほぼ書いてないですし。それでアロマのアプリAroma Pearlを作ったんです。アロマを使うことで医療費の節約にもなりますしね。

 

Spring Step: ディクショナリーでアロマが面白いと思ったら、Aroma Pearlをダウンロードして頂ければ、さらに細かい対処ができるわけですね。

 

栗栖さん: はい、ぜひ(笑)。でも私の周囲ではディクショナリーを見て、「便秘がよくなった!」「風邪が悪化しなかった」という人が何人もいるんですよ。スマホでもすぐ見れますし、パソコンでも簡単に検索できるので、色々役立ててほしいですね。

 

PROFILE 

栗栖智美 Tomomi Kurisu / アロマトローグ

2002年よりパリ在住。フランスのアロマテラピー学校 IPALにて、アロマテラピー、オルファクトテラピー、コスメトロジーを修得。自然療法の学校FLMNEにてフィトテラピー、アロマテラピー、アロマコロジーを修得。

2014年よりメディカルアロマ塾を開講し、フランスアロマテラピーを教えている。2015年にはフランス・アロマテラピーのiphoneアプリAromapearlを開発、フランスにてリリース、2017年には日本にてリリース。

2016年夏より毎年、東京と大阪にてのべ400人以上の方にフランスのアロマテラピーを知ってもらうセミナーを開講している。2017年9月一般社団法人パリ・フィトアロマ協会を発足し、フランスのリアルなアロマテラピーや自然療法の啓蒙活動をしている。 

http://www.iledesfleurs.com

栗栖智美先生の開発されたアプリAroma Pearl

 

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