【薬膳料理研究家に聞きました】薬膳とはどんな食事のことですか?

2019.01.24

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私たちは草で生かされている

Text & Photo : Spring Step 

Spring Step : オオニシ先生には、私たち、Spring Step のサイト内にある、フィトテラピーディクショナリーの監修をお願いし、私も日々活用させていただいています。今回は、先生に改めて「食」についてのお考えをお聞きできたらと思います。

まず、先生の考える薬膳とは何ですか?

 

オオニシ恭子さん(以下 オオニシさん) : 薬膳とは、「薬のお膳」と書くように、身体を養うお膳のことです。食べる物が「薬」という考え方ですね。お台所にあるような日ごろ食べている物や、自分が暮らす地域に生えている物の中に薬膳の材料はあるということです。

「薬」という字は草かんむりに楽と書きますよね。私はこの字を、草のもとで体が楽になって、楽しく暮らせるという意味に解釈しています。楽しいと感じる人生を送れるような提案も含めて「薬膳」だと思っています。

 

薬というと病院や薬局へ行かないと買えないものだと思われるかもしれませんが、そうではなくて、皆さんが毎日食べているものが実は「薬」なんです。それが私たちは草で生かされているということなのです。食べ物は食べるだけでなく、例えば、大根は蜂に刺されたときに、お豆腐は熱が出たときに、里芋は腫物や火傷をしたときに直接患部に当てることで治すことができます。私は長年食べ物だけで、色々な人の不調のケアをしてきました。。私が“してきた”というよりも、ただその使い方を知っていただけなのですが。その人が何をしたら良いのか、方向性は示しますが、治すのは体の中にある自然の治癒力と野菜の力です。その力には毎回驚かされて、まだ他にも知らない力があるかもしれないという思いから、探求することを止められません。それを知らないのはとてももったいないことだと思います。

 

台風を受けても、農薬を撒かれても生き続ける植物の生命力は大変強く、それをいただくことが私たち人間にとって大切なことです。私たちが生きるために必要な、呼吸や循環、消化といった活動は全て植物も行っていて、この活動を行う胃や腸、肺は人間の中にある植物的な器官です。“植物状態”とは、この植物的な器官は機能していても、手足を動かしたり移動したりするなど動物的なことができなくなる状態のことをいいますよね。私は、胃や腸、肺などの植物的な器官にこそ、植物と同じ生命力を送り込むことが健康の元だと考えています。

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人間は消耗品!?私たちにとって食べることとは?

 

Spring Step : 食べることとは、私たち人間にとっての一番の基本ということですか?

 

オオニシさん : 私たち人間は消耗品です。人によって長さは違いますが、消費期限があります。人間は約60兆個の細胞が入れ替わりながら生きていると言われていますよね。細胞が入れ替わるためには、食べることが必要なんです。

 

細胞が入れ替わっているということは、基本的なお話をすると、どんな病気や不調でも血液が入れ替わる120日間を経ると、回復の方向に向かう可能性があると考えられます。自分の細胞に必要なものを食事できちんと摂っていれば、状態が悪くなる人はいないはずです。ただし、病気が治るのにかかる時間は人によって違います。例えば、50年間かけて不調の原因を溜め込んだ人が50年前の細胞に戻すにはそれ相応の長い時間を要するということです。

 

Spring Step : 血液は食べたものでしかできていないから、良い血液になったら必ず体は変わりますよね。

 

オオニシさん : はい、その確信が私にはあります。

 

Spring Step : 病気ではないけれど、疲れが取れないなどの不調が続いている人にはとても希望が持てるお話しですね。

 

オオニシさん : そうです。良くならない人は摂るものを間違えているからです。

 

Spring Step : まずは、自分に何が必要なのかを知ることが大切ですね。SpringStepのフィトセラピーディクショナリーにある「陰陽のバランスチェックシート」で自分の体質を見分けてみてもいいですよね。

 

オオニシさん : そうですね。まずは自分のことを知ってから、大体の方向性を決めて、そこから必要な物を選んでいけば間違いないです。誰かの意見に流されず、自分のことは自分で理解して、“自分自身のプロフェッショナル”にぜひなっていただきたい。

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オオニシ流、理想の日本の食卓とは?

 

Spring Step : 現代人の食生活をみて危機感を持たれているかもしれませんが、先生がイメージされる理想の食卓というのはどのようなものですか?

 

オオニシさん : 何よりもまず、農薬と添加物を使っていない食べ物で揃えたいですね。誰にとっても良くないものだから。また、利便性のためだけに遺伝子を変えてしまうのも、なんというか、不吉な感じがします。自然の中で個性を出しながら精一杯生きている植物はきちんと尊重しないといけないと私は思います。

 

Spring Step : なぜ農薬と添加物を排除したほうがいいと思われているのですか?

 

オオニシさん : それは、身体の細胞が要求していないからです。私はこれまでに、病気や不調を抱える方にたくさんお会いしてきましたが、農薬と添加物、あとは病院で処方してもらう薬が原因であることが多いと感じています。昔と比べて、空気や土、水が汚れてしまった環境下で生きて行かざるをえない中で、せめて自分で取捨選択することができる食べ物くらいは、農薬や添加物が使用されていないものを選んでほしいと思います。

 

食べ物の仕事をしていると、食事が原点だと痛感させられることがたくさん起きます。この間は、長年皮膚の病気に悩んでいた男の子がお母さんと相談に来たのですが、私はすぐに治ると確信しました。お話を聞くと、別の病気で1か月間ステロイドを投与されたことがわかったので、それを徹底的にお掃除することにしました。私のお家で男の子をお預かりして、食事を変えて、患部に里芋を貼っていたら、5日間で奇跡的に良くなりました。これには私もびっくりしました。里芋は本当にすごいですよ。毒素を体の外に吸い出してくれるんです。ほかにも、頭痛がひどくて効く薬ももはやないという女性に、髪の毛を全て剃ってもらって、頭に里芋を塗ってあげたところ、何年も悩み続けてきた痛みがたった1回でとれてしまいました。

 

Spring Step : 私は疲れてくると咳や痰がでるのですが、どうしたらいいですか?

 

オオニシさん : 寝るときに首の付け根から胸のあたりに里芋を貼るといいですよ。擦った里芋に小麦粉を混ぜて、通気性のよい薄手の布に1センチの厚さで塗って貼ってみてください。悪い部分もわかりますよ。はがした時に悪い部分があれば里芋や布が黒くなっていたり、水が溜まっていたら里芋が水っぽくなっていますから。

 

悪いところをケアせずにどんどん積もって、身体が我慢できなくなった時に出るのが更年期障害ですね。更年期障害は、シンプルな食事を心がけて、体内がきちんとクリーニングされていれば出ないはずです。

 

私は里芋に限らず色々なお野菜を使います。ごぼうもすごいパワーです。ごぼうは盲腸や腹膜炎、アレルギーも良くなります。これこそ「薬草」なんです。自分が発見したわけではなく、昔の人から知恵として伝わってきたものをたまたま知ることができただけなので、たくさんの人が知っていればいいのにと思います。

 

Spring Step :  先生に相談に来る女性で多いお悩みは何ですか?

 

オオニシさん : 子宮がん、子宮筋腫、乳がんの相談が多いです。あとは不妊ですね。冷えが根本的な原因です。お話を聞くと、忙しくて自炊できていなかったり、食べる時間すらなくて、コーヒーとお菓子で済ませているという方もいらっしゃいました。そんな食生活ではお腹の中が貧しくなってしまいますよね。あとはダイエットのために食事を摂らず、血ができなくなっていたり。平熱が36度に未たない方も多く体がとても冷えています。スムージーやローフード、白砂糖、南国のフルーツなどは体を冷やすので摂りすぎないほうがいいです。体が整えば、体に聞くという行為がうまくできて、自分が今何を食べたら良いか分かるはずなんです。

 

Spring Step :  スプリングステップのディクショナリーのページでは、冷え性のレシピもご紹介しているのでぜひ見て欲しいですね。

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今日から始められる薬膳の“ファーストステップ”を教えてください

 

オオニシさん : 細かいお話をすると、日頃どのような食生活を送っているかによってファーストステップは変わってきますが、何よりまずは、農薬と添加物が使われているものを食べないことですね。

 

Spring Step : 先生のお話を聞いて改めて思いました。農薬や添加物は万病の元ですね!買う場所を選んだり、出来合いの物をなるべく買わないようにすることが大切ですね。

 

オオニシさん : あとは、毎日の食事はシンプルにすること。時々ごちそうを食べることは良いですが、日頃の食事はシンプルに。バランスも大事です。玄米が良いと聞くと玄米しか食べなかったりする方もいますが、玄米を食べたら消化を助けてくれるお野菜も一緒に取ってください。

 

PROFILE

KYOKO ONISHI オオニシ恭子 / 薬膳料理研究家

20代後半、新時代を担う新進インテリアデザイナーとして嘱望されるが、1970年のオイルショックの頃あらためて資源について考えさせられるとともに、自身のひどい手荒れをきっかけに食養法に出会う。
桜沢リマ氏に師事。食は環境を摂取することであり、環境に適応して生きていくことが基本であることを認識。1981年渡欧。以来32年、東洋的食養法を基本としながらも欧州における素材と環境を取り入れた食養法を研究。個々の生活と体質を見ながら、その環境に適応する食事法「ヨーロッパ薬膳」を指導。ベルギー、オランダ、フランスで定期の料理講習を行うほか、活発に講演会、食のアドバイス、女性の健康セミナーなどを行う。2004年パリでNPO団体「J.O.Y.plus Paris」を立ち上げ、更なる食育活動に努める。2011年の東日本大震災を機に、2013年1月より奈良・初瀬の地に移住し「やまと薬膳」の活動を開始する。
主な著書 : Les algues au naturel ( Edition alternative)、  ヨーロッパ薬膳 すてきな自然の贈り物

(神戸新聞総合出版センター)、滋養ポタージュで始める ヨーロッパ薬膳(講談社)、簡単! 生命のスープ ~1週間でからだの中から整える~(ビジネス社)、砂糖をやめて元気で医者いらず(主婦の友社)

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