【暮らしかた冒険家にききました】エコハウスってなんですか? 家づくりの前にそもそもやっておくべきこととは?

Way of living Women's life Lifestyle Green Tech Ecology Special Interview
2021.02.11

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普通のものって何だろう?

Spring Step : 『暮らしかた冒険家』として活動している伊藤菜衣子さん。自分のすべてを、人生を実験室のようにとらえていて、家のこと、夫婦間のこと、仕事、子どものことなど、人生にまつわる問題点を公開して、共有しています。前回は、リモートの働きかたについてお話を伺いました。

 

伊藤菜衣子さん(以下、伊藤さん) : ひと言でいうと、家の中で起こることすべてを冒険しています。日本は、高度成長で“モノが足りない”という中でビジネスがつくられ、発展してきましたが、私たちの世代からすると、何でこんなに効率化しているんだろう、逆の場合もあります。そこで、暮らしている中で、“普通のものって何だろう”、“子どもの世代で何が普通になっていたらいいんだろう”って考えるようになり、それをいつも探しています。

 

Spring Step : 聞きたいことはたくさんあるんですけど、今回は「家」をテーマにお話を伺います。日本の家でまず思うのは、とにかく寒いですよね! フランスのアパートって建物は100年ぐらい経っていて古いけれど、石造りだから高断熱で、セントラルヒーターがつくと汗ばむくらい暖かいこともあるんです。

 

伊藤さん  : そうですよね、日本は高気密・高断熱の住宅がまだまだ普及していませんから。

 

Spring Step : 伊藤さんのお家は、高気密・高断熱?

 

伊藤さん  : はい。うちは、3階に14帖用のエアコンが一台と、階に床暖房がほんの少しついているだけです。このエアコンをつければ、2階の天井まで(吹き抜けで天井までおよそ4m30㎝)家全体が暖かくなりますね。

 

Spring Step : お部屋ごとにエアコンがあるのではなく、家にひとつしかエアコンがないとは! 節電、省エネ、まさにエコなハウスですね。

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エコハウスとそうでない家の分岐点とは?

伊藤さん : 高気密・高断熱って、環境だけではなく、実は人間にとってもすごくいいんです。絶対湿度(一定の空気の中にある水蒸気の質量をあわらしたもの)が10~11g/㎥ぐらいが快適なんですけど、うちは今、10g/㎥だから、ちょうどいい湿度です。

 

Spring Step : 湿度が高すぎるとじめじめするし、低すぎるとカラカラするし。

 

伊藤さん : 冬になると、外気と室内との温度の違いで、窓のアルミやアルミ複合サッシが結露して、ますここが除湿機能を果たしてしまいます。さらに、こまめに掃除をしないとカビが生えてしまいます。そのカビが原因で喘息を引き起こすこともありますから。

 

Spring Step : そもそも、カビないようにするにはどうすればいいんですか?

 

伊藤さん : 外の熱を伝えにくい素材に強化することです。

 

Spring Step : 壁や床、天井などを断熱するということですか?

 

伊藤さん : いちばん大切のが、窓なんです。アルミサッシって熱伝導率が高いので、外の湿度をダイレクトに伝えてしまうという性質があります。この家は、断熱性の高い樹脂サッシで、三重窓(YKK AP)にしています。

 

Spring Step : なるほど、でも、一般的な窓と比べるとお値段も高そう。

 

伊藤さん : もちろん初期費用は上がります。ただ、エコハウスとそうでない家の分岐点って、だいたいエアコンが壊れるだいたい10年目なんですよね。うちの場合は、家にエアコンがひとつしかありませんから1台を買い替えればいいんですけど、一般的な家は部屋に1台ずつある場合は、その台数分すべての費用がかかるわけです。もちろん、電気代にも大きな差がでます。初期投資は高かったとしても、長い目で見ればだいぶ違ってくると思います。

 

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家づくりはライフデザイン

Spring Step : 伊藤さんは、今の家は3軒目になるそうですね。今回の家づくりで準備したこと、そもそも家づくりの前にすることって何ですか?

 

伊藤さん : 根本となるのは、予算感です。住宅メーカーが提示している金額って、その家族の年収で決めているようなところってあると思うんですよね。例えば、4人家族で、年収がいくらだとしたら、だいたい何千万円の家、みたいな。でもそうではなくて、どういう暮らしがしたいのか、そのためにいくら家を建てるのにかけるのか、それを家族でよくよく話し合うことが大切。

 

Spring Step : 確かに、家の値段って毎月のお給料とか会社の規模によって、決められるようなところってあるかも知れませんね。

 

伊藤さん : D&DEPERTMENTのナガオカケンメイさんが家に遊びにきたとき、「この家、金持ちなんだか、貧乏なんだか、わかんないなー(笑)」って言われたんです。お金のかけるべきところには厭わず、そうでないところはとことんかけない。さきほどの窓にはお金をかけていますが、食器の収納は桐のタンスをリメイクしていますから。でも、キッチンの天板テーブルは大理石。自分たちの住む家で、どんな暮らし、どんな時間を過ごすかを考えました。

 

Spring Step : 家づくりは、ライフデザインなんですね。

 

伊藤さん : よく家のパンフレットやCMでアイランドキッチンってあるじゃないですか。子どもたちと話しながら料理をする感じ。すごくお洒落だとは思うけど、私にはまったく必要ないんですよ。私、週末に常備菜を作っているんですけど、料理をするときはすごく集中して一気に作るので、子どの顔なんてぜんぜんみませんから(笑)。

 

Spring Step : 自分の行動パターンや家事の仕方によって、間取りは違いますからね。

 

伊藤さん : そうですよ。私はとにかく家事を効率よくこなしたいと思っているので、ルンバのことを考えて、床から10㎝のスペースを確保しました。それと、シンク幅と同じ食洗器(Mieleの60㎝)を入れています。これには、設計者含めて全員一致で懐疑的でしたよ。

 

Spring Step : それってどうしてですか?

 

伊藤さん : 日本では、手で食器を洗うのが当たり前っていう前提があって、シンクは大きければ大きいほど使いやすいと思っています。その日本の家事を見直す考えのひとつとして、私は手で洗う代わりに、60㎝の食洗器にこだわりました。

 

Spring Step : 私の家の食洗器も同じ60㎝サイズです。それより小さいなんて考えられない!

 

伊藤さん : そうですよね。食器をわざわざシンクで洗ってから食洗器にかけることはほとんどしないから、シンクは大きくなくていいんですよ。

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家をお洒落に見せるコツあれこれ

Spring Step : ここからは、家にまつわることについていろいろ質問させてください。さきほどのルンバや食洗器の話もそうですけど、他に家事をミニマムする工夫はありますか?

 

伊藤さん : ランドリールームです。洗濯機ってお風呂場と脱衣所、洗面所とセットになっていることが多いと思うんですけど、うちは洗濯機と洗面台、そしてクローゼットがセット。最初から、洗濯カゴが家族の人数分あって、別々にあらって、洗濯が終わったら、仕分けなしに収納しています。スペースは4帖ぐらいありますね。

 

Spring Step : お部屋の間取りはどんな感じですか?

 

伊藤さん : 二階に寝室、バスルーム、(ここにも洗面台がある)ランドリールーム、リビング、キッチンがあります。1階に仕事部屋と作業部屋ですね。夫は平屋が好きなので、生活は、2階でほぼ完結しています。

 

Spring Step : お家をお洒落に見せるコツはありますか?

 

伊藤さん : プラスチックを隠す、ってことですね。例えば、プラスチックの衣装ケースをそのまま出しておくのではなくて、いい感じのカバーをかけてゲスト用のベッドみたいに見せちゃうとか。

 

Spring Step : 見せ方にもいろいろコツがありそうですね。

 

伊藤さん : モノや素材を揃えるっていうのもお洒落に見せるコツかもしれませんね。ちぐはぐなものを雑然とおくよりも、何か統一したほうが、スッキリ見えます。例えば、壁に大小異なる額に入れた絵や写真を飾るとします。その時、バラバラに飾らないで、”つらを合わせる”と整然してキレイに見えます。

 

Spring Step : たくさんお話を聞けて、勉強になりました。ありがとうございました!

 

伊藤さんの取材は、2021年1月29日のIGTVライブで行われました。

ライブでは、実際に家の中もご覧いただくことができます。こちらから→

 

PROFILE

伊藤菜衣子 Saiko Ito / 暮らしかた冒険家・クリエイティブディレクター

 

『未来の”ふつう”を今つくる』をモットーに、家作りや夫婦観など暮らしにまつわる違和感をアップデートぢ、言語化を試みる。あらゆることを実現するために、SNSを駆使し、リアルでも泥臭く奔走し、未来の暮らしを手繰り寄せていく様を、坂本龍一氏は、「君たちの暮らしはアートだ」と評す。2003年〜2012年、100万人のキャンドルナイト事務局にてクリエイティブに携わる。2014年、札幌国際芸術祭参加。2017年、初監督作品映画「別れかた暮らしかた」を発表。著書に編集と執筆を手がけた「あたらしい家づくりの教科書」これからのリノベーション断熱・気密編」(ともに新建新聞社)、「これからの暮らしかた Off-Grid Life トーク集」(dBOOKS)など。

 

インスタグラム

https://www.instagram.com/saikocamera/

「人生とは自分にかかっている呪いを ひとつひとつ解いていく冒険」をnoteにて連載中https://note.com/bouken_life/m/m6db7ec33c438

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