【SpringStepローンチ記念イベントスペシャル対談 PART3】私たちの日常生活とボルネオの森林破壊の意外な関係とは?

Lifestyle Ecology Special Interview
2018.06.21

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パームオイルって?

Spring Step : 水谷さんは、世界のあちこちの森林を訪れていらっしゃいますよね?

 

水谷さん : はい。僕は森林保全の活動をしていて、最初はインドネシアのボルネオ島の熱帯雨林での活動から始めました。ボルネオ島というと、皆さんはきっと鬱蒼とした熱帯の森を想像されますよね?

でも実際は結構ハゲだらけなんです。今は森がすごく少なくなってしまっています。

 

Spring Step : えっ!そうなんですか?それはなぜですか?

 

水谷さん : 理由は色々あります。カップラーメン、ポテトチップス、チョコレート菓子、マーガリンやアイスなどの食品や、化粧品、洗剤などに共通して使われている原材料があるんですが、ご存知ですか?それは植物油脂とよく記載されているもので、さらに掘り下げていくとパームオイルなんです。ヤシ油とも呼ばれていますが、ココナッツとは違って、赤い実のなる品種です。アブラヤシ、パームヤシと呼ばれるこの実を絞って採れるオイルのことを「パームオイル」と呼びます。

 

 

Spring Step : 化粧品で使われている合成された原材料でも、名前はパームオイルとは記載されていませんが、元を辿るとパームオイル由来のものが、かなり多くあります。

 

水谷さん : そうですね。パームオイルの8割くらいは食用に使われています。このアブラヤシは、そもそも熱帯でしか育たない品種なのですが、栽培するには一度熱帯雨林を更地にする必要があるんです。

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ボルネオの森は今

 

水谷さん : この写真は一見森のようにも見えますが、すべてアブラヤシの木なんです。本来の熱帯雨林であれば、何千種類もの動植物が生息していたところに、アブラヤシというたった一種類の植物だけを植えてしまうため、生物のダイバーシティーがなくなってしまいます。また、雑草が生えないように農薬も撒くため、水の汚染やプランテーションで働く人の健康被害にもつながなっています。

 

更地にする際に、焼畑のように森に火をつけるのですが、先住民が行う小さな焼畑農業の規模とは全然違い、「ブワーッ」と炎が広がるんです。しかも雨の少ない時期だと広範囲にわたって燃え広がり、大きな火災になります。2015年にインドネシアで大森林火災があったのですが、そのときに消失してしまった森林の広さは、東京都10個分にも及びます。東京ドーム10個分ではありませんよ、東京都10個分です。

 

Spring Step : 東京都10個分ですか!?それは、この焼畑が原因だったのですか?

 

水谷さん : 全部ではありませんが、インドネシア政府は、これも原因の一つだと断定しています。この煙がシンガポールまで流れて、健康被害を懸念して学級閉鎖が起きたり、視界が悪くなったことで空港が閉鎖されるなどの被害がありました。日本でもPM2.5 などが海を越えて流れてきていますが、東南アジアでは、この火災の煙はヘイズと呼ばれていて、シンガポールやクアラルンプール在住の人たちが6月くらいになると「またヘイズの時期が来た!」と言っているのを耳にします。

 

Spring Step : この焼畑によって、森の動物たちもいなくなってしまいますよね?

 

水谷さん : そうなんです。森がプランテーションになってしまったことで、住まいを追われたオランウータンがパームの実を食べに出没するようになってしまうんです。すると、このオランウータンたちは今度は「害獣」扱いにされ殺されてしまうんです。オランウータンが絶滅危惧種になっている原因は、我々がパームオイルを使っていることがそのひとつにあるかもしれません。だからと言って、僕はパームオイルを使うべきではないと思っているわけではありません。パームオイルは本当に便利な植物なんです。だから賢く使っていく必要があると思います。

 

 

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正しいパームオイルを使うために、水谷さんが提案するステップとは

 

水谷さん : 日本ではあまり知られていませんが、実はパームオイルにも認証ラベルがあるんですよ。そのような認証を得た製品を使うこともできると思います。

 

Spring Step : 先ほどのお話を伺うと、ラベルのないパームオイル由来の製品は使いたくなくなってしまいますよね。化粧品でもパームオイル由来の界面活性剤というのが非常に多いのですが、それはパームオイルの持つ分子構造が界面活性剤に適していて、これに似た分子構造を持つ植物があまりないためだと聞いたことがあります。オーガニック化粧品の認証ラベルは原料のトレサビリティーもポイントで、オーガニックの認証を取得するためには、その界面活性剤に使っているパームオイルが、どこで採られたものなのかという点も調べられます。正しく栽培されたところから採取されたものでないと認証が取れないので、化粧品では、オーガニックの認証ラベルがパームオイルの産地が健全かどうかを知るための一つの目安になると思います。

 

 

水谷さん : ヨーロッパでは、ある大手食品・飲料メーカーがこのようなパームオイルを使って製品を作っているということで、NGOから強い非難を受けています。すごく生々しい映像での反対キャンペーンなども行われています。トレサビリティーがしっかりしていない原料を使うことは、企業イメージを損なうリスクにもつながります。

 

Spring Step : パームオイルが使われている製品は、日常にあまりにも多いですよね。

 

水谷さん : そうなんです。全てを避けることは難しいため、せめてパームオイルの認証ラベルがついた製品を選びたいですね。認証審査には、例えば、オランウータンのような希少な動物がいるところではプランテーションの開発をしない、従業員の健康維持に配慮をしている、などのチェック項目があり、それらを全て満たした製品にのみ認証ラベルが与えられるんですよ。

 

Spring Step : そのラベルは、なんという名前ですか?

 

水谷さん : RSPOという名前で、 Roundtable on Sustainable Palm Oil(持続可能なパーム油のための円卓会議の意)の略です。 RSPO の認証は、ヨーロッパでは、認知されつつありますが、残念ながら日本での認知は高くないですし、RSPOを採用しているメーカーは本当に数えるほどしかありません。

 

 

Spring Step : 今回お話を伺い、トレースのできるものを使うことの大切さをさらに感じています。

 

水谷さん : そうですね。ただ、認証ラベルが全てというわけではないですし、それが100%正しいと言ってしまうと、盲目的に信じて、考えるきっかけを失ってしまうと思います。まずは、付与されているラベルの意義を捉えることが大切だと思います。

 

Spring Step :  化粧品もオーガニックの認証ラベルが全てではないですが、その原料がどこから来ているのかというトレースをするためや、人体被害がないか、または使用されている原料を抽出する際に使用する薬剤と方法は環境に負担がないか、また抽出、製造に使用する機材など工場で使われるものの清掃用の製品まで規定があるんです。多くの認証を取得するにあたって、毎年厳しい監査が行われていると思うので、そのことも考えると、ラベルは100%の保証ではないですが、ある程度の目印にはなるのだと思います。

 

水谷さん : そうですね。消費者として、そういった認証ラベルを取得しようと努力している企業を応援することはできると思います。その反対に、価格が安いということだけを基準にして原料の購入を行っている、手抜き企業や、環境にインパクトを与えて、サステナビリティーを逸脱している企業は逆に応援しないとか。

 

Spring Step : 本当にそうですね。それでは水谷さんから、今日から私たちができる、環境に対するステップのご提案をお願いできますか?

 

水谷さん : そうですね。さきほどのパームオイルの話、意外とあまり知られていないと思うんです。だから、「知ってた?」って周りの人にこのパームオイルの実態をぜひ伝えて欲しいです。それによって、RSPOの認知も上がり、RSPOに参加する日本のメーカーが増えます。すると、パームオイルのサプライヤーも調達方法を変えます。そして最終的には産地の熱帯雨林の環境インパクトが改善されていくと思います。

 

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