【人生はDIY⑤】「夏の家が暑いのはしょうがない」という思い込みを疑ってみよう 伊藤菜衣子 連載

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2022.07.14

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思い込みを疑ってみよう

TEXT/PHOTO: SAIKO ITO

 

「ふつう」とされるロールモデルにフィットするように自分の人生を型にはめることが当たり前だと思っていることが多々ある。そんな空気にあらがって、自分の人生の理想のカタチを思い描いてはDIYしてきたけれど、一歩すすむごとに、また何かに囚われている自分に気がつくというのを繰り返しています。

 

その「ふつう」ってどうやって生まれたんだっけ?誰が決めたんだっけ?そんなことが、どうやら人よりも気になってしまう暮らしかた冒険家 伊藤菜衣子の衣・食・住・家族・仕事などの「ふつう」を疑ってみたエピソードを毎回紹介します。

 

第5回は、夏の住宅の不快さの解消方法のご紹介です。築100年くらいの町屋をセルフリノベーション、築30年の家を断熱リノベーション、新築戸建と、これまで3軒の住宅をあらゆる方法で快適にすることを探求してきました。日本の家の断熱性能が先進国の中でとても低いという根本的な問題から、賃貸でもできる夏対策、そしてこれから家づくりする方へのポイントなどを紹介します。

 

Spring stepで 新居のエコハウスのこと についてインタビュー記事も掲載されているので、ぜひ合わせてご覧ください。

 

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「夏の家が暑いのはしょうがない」というのは本当なのか?

日本の住宅は、第二次世界大戦後の深刻な住宅不足から始まり、経済成長、ライフスタイルの変化により建てては壊すScrap and Buildを繰り返し、質より量に重点を置いて、家がつくられてきた経緯があります。

出典:これからのリノベーション 断熱・気密編

 

そんな背景もあり、住宅の夏の暑さに必要不可欠な「断熱性能」が今はまだ義務化されていません。2050年カーボンニュートラル実現への対策が急がれる中、やっと2022年6月に建築基準法の改正が可決、成立し、2025年からは義務化されることになったばかり。そして、その義務化の基準「等級4」も、欧米の断熱基準に比べるととても低いものなのです。

 

ということで、現状、日本のほとんどの住宅が、夏も冬も快適に過ごすには断熱性能が低すぎるという大きな問題があります。

 

すでに、夏も冬も少ないエネルギーで快適に過ごすことができる【高断熱住宅】をつくる技術は確立されています。しかしながら、多くのハウスメーカーや工務店や設計士が建てられる状況ではないので依頼先の吟味は必須ですが、建材の種類もこの10年ほどで驚くほど増え、これから一般化していくでしょう。

 

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夏の家を快適にするには【断熱】と【遮熱】が大事

 

まず、夏の家の快適さをつくるには、【断熱】と【遮熱】がポイントです。

 

≪断熱ってなに?≫

【断熱】とは、家の中と外の熱を伝わりにくくすることです。

 

服装で例えるならば、スキーウェアに全身すぽっと包まれるような感じです。(スキーウェアの場合は、体から発する体温で中が暖かくなります。)

 

断熱材で、家をぐるっと包んで、熱の移動をしにくくするイメージです。断熱材と一言に言っても、石油由来のもの、ガラス繊維、古紙をリサイクルしたもの、羊毛までいろいろな種類があります。

 

≪遮熱ってなに?≫

【遮熱】とは太陽光の熱を主に窓などから家の中に通しにくくすることです。

 

服装に例えるならば…と断熱と揃えようとして書きましたが、服装ではないんです…。日傘をイメージしてください。日陰をつくると涼しくなる、という原理です。

 

住宅においての日傘の役割は、庇(ひさし)と言って、窓や出入口の上に取り付けられる小型の屋根があります。マンションの南向きのベランダに奥行きがある場合は、上階のベランダが日よけの効果を発揮していることも。あとは、窓周りに備え付けのシェードやルーバーなどがあります。グリーンカーテンも同じ原理ですね。あとは、昔ながらの風景ならば簾(すだれ)や葦簀(よしず)があります。

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やってみよう、賃貸でもできる【遮熱DIY】

まずは断熱よりもお手軽な【遮熱】を改善してみましょう

出典:あたらしい家づくりの教科書 P126 太陽の熱と上手に付き合おう

 

《その1》遮熱率50%:カーテン、ブラインドなど

直射日光が差し込む時間に、カーテン、ブラインドなどを閉めるだけ。室内に日向をつくらなければ良いのです。これだけで、窓ガラスのみの場合より30%も遮熱効果が高まります。すでにあるものでできるので、最もお手軽ではないでしょうか。

 

《その2》遮熱率70〜85%:断熱ブラインド

わたしの1番のおすすめで、インテリアとしてもオシャレで遮熱にも断熱にも効果を発揮します。IKEAのHOPPVALはお手頃なので、断熱ブラインドデビューにおすすめです。遮光タイプが効果は高いですが、採光タイプは部屋が暗くならずに効果を発揮するので、実用性が高いのは後者だと思います。

 

《その3》遮熱率85%:雨戸、簾(すだれ)、葦簀(よしず)、日よけシェード、タープなど

家の外側で直射日光を遮る方法が、最も遮熱効果が高いです。葦簀は、立てかけて使うので、設置に手間がかかりません。また、マグネットがついたフックなどを使い、簾や日よけシェードを窓の前にかけるのもおすすめです。ポイントは、太陽光が室内に入らないように設置することです。

 

コストパフォーマンスが高いのが、農業用の遮光ネットです。ビニールハウス全体にかける大きなものもあるので、サイズ確認はきちんとする必要がありますが、安くてシンプルです。遮光率がさまざまなので、要確認です。

 

最も遮熱効果が高いですが、室内が暗くなるというデメリットはあります。

 

※いずれもダブルの窓ガラスの遮熱率20%を加算した遮熱率となっています

 

【遮熱DIY まとめ】

いきなり大掛かりなことをする必要はありません。すでにあるもので実験しながら、ぜひベストを探ってみることをおすすめします。

 

わたしのおすすめは断熱ブラインドです。遮熱・断熱効果も和紙のような素材でできていて、光が美しくまわります。

 

ちなみにわが家は、日中は使わない寝室は、シャッターを半開きに。リビングの天井の窓は断熱ブラインドという感じで使い分けています。

 

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これから家をつくるなら夏も冬も快適な家にしよう

これから家を建てたり、リノベーションしたりする予定がある方は、ぜひ断熱性能が高い家を目指すことをおすすめします。

 

≪暮らしの質がグンと上がる2つの条件≫

✔︎断熱等級6または7(2022年10月に施行予定)

 →10畳用程度のエアコンを各階に1台ずつで冷暖房が賄える性能。

 

✔︎樹脂サッシ または 高性能な木製サッシ 
 ぜひトリプルガラスを

 →夏も冬も、窓の前に座っても外気温の影響をほぼ感じない。年間を通してほぼ結露しないため、アレルギーやぜんそくの原因にもなるカビやダニが発生しにくい。また、空気中の水分が、結露水にならないため、湿度を保ちやすく、ウイルスや美容対策にも効果的。ちなみに樹脂複合サッシは、樹脂とアルミでできており、断熱性能は下がるため、結露が発生しやすいので、おすすめしません。

健康と美容には、食べ物、運動、住環境!

 

≪夏、涼しく快適な家は高いのか?≫

現在は、ウッドショックなどにより、状況が変動していますが、それ以前のデータでは、断熱・気密施工でコストアップする費用は、光熱費のコストダウンする費用で相殺されます。快適になった上に、結果的にコストは変わらないのです。

 

さらに、住宅の断熱性能が上がることにより、エアコンなどの冷暖房機器の台数が減ります。これらは約10年ごとに買い替えになりますので、10年ごとに、冷暖房機器の数だけ、差額が発生し、お得になります。

 

出典:あたらしい家づくりの教科書 P53「高性能住宅の費用イメージ」

 

≪きちんと設計・施工できる方を見つけるための3つの質問≫

ハウスメーカー、工務店、設計事務所、大工さん…、頼み先はいろいろあります。高断熱住宅というワードは普及してきましたが、まだまだ断熱・気密を理解し、設計・施工を行える方が少ないという課題があります。この3つの質問に「はい」と答えられる方は、2022年現在、なかなか見つからないかもしれませんが、快適な家を目指すべく、根気強くいきましょう。

✔︎UA値を計算したことがありますか?

 →UA値とは家から逃げる熱量のこと。設計時に《計算》します。

 

✔︎C値測定をしたことがありますか?

 →結果が0.5㎠/m2以下だと◎、最低でも1㎠/m2は必須。実際に完成した家で《測定》します。

 

✔︎樹脂サッシ、トリプルガラスの窓を扱ったことがありますか?

 →アルミサッシやアルミ樹脂複合サッシに比べて、重量があるので、構造の懸念がある。  また、見た目も異なるため、これまでとは異なる設計の工夫が必要。

 

【快適な家づくり まとめ】

夏も冬も快適な家を手に入れるには、「高断熱住宅」が法律や慣例になっていないので、住まいの知識を深めることと諦めない気持ちが必要です。家をつくっているときには、効果が見えない断熱なので、ついつい予算を削ったりしがちなのです。ただ、これまでたくさんの高断熱住宅のユーザーのお宅に訪問し、取材をしてきましたが、最も手放せないものとして断熱性能を上げる方がとても多いのです。ぜひ、快適で涼しい夏(暖かい冬ももれなく付いてきます)を手に入れましょう。

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思い込んだままガマンしないことが 社会課題を解決していく

「夏の家が暑いのはしょうがない」と思い込んで諦めてしまえば、社会はアップデートされることがありません。しかし、自分の住環境をアップデートしていくという個人的な試行錯誤は、実はカーボンニュートラルなどをはじめとする大きな環境問題の解決に繋がります。

 

遮熱DIYをすることは、夏の太陽光の熱を防ぎ、自己犠牲を強いることなく、電力消費量を減らすことに貢献できます。エアコンによっては、電力使用量を表示できるものもあるので、1日つけっぱなしと、こまめなON/OFFの場合、どちらの方が快適か、電力使用量が低いかなどの実験をしてみることもおすすめします。

 

また、第5章でご紹介した通り、今はまだ仕様や発注先を決めるのにコミュニケーションが必要ですが、そういう先駆者のみなさんの行動が「夏、涼しい家」を当たり前に手に入れられる時代をたぐり寄せていくのです。

 

樹脂サッシを販売する窓メーカーの方が「樹脂サッシの普及は、業界や設計・施工者の意識を変えるよりも、消費者に周知してもらった方が、普及が早いと思う。」と話していました。わたしも、そう思います。なぜなら、家を10年で3軒つくる中で、住宅業界における「お客様の“簡単には覆らない”意志」というのは、とても大事にされるものだからです。“簡単には覆らない”と書いたのは、あの手この手で「これはオーバースペックじゃないですかね」「ここまでの性能はいりませんよ」というジャブが入るので、それを間に受けずに、意志を貫いた場合に限るという状況があるからです。

 

「夏、涼しい家」への試行錯誤は面倒なこともありますが、どんな小さなことも、ちゃんとたくさんの人の未来に繋がっているというイメージを持って、やってみることをおすすめします。

 

DIYで断熱もやってみたい!という方は、ぜひ「これからのリノベーション 断熱・気密編」にやり方を掲載していますので、参考にしてみてください。

 

みなさんのご活躍、Instagram で @saikocamera にぜひお知らせください。たのしみにしております!

 

 

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PROFILE

伊藤 菜衣子 SAIKO ITO / 暮らしかた冒険家

 

「未来の“ふつう”を今つくる」をモットーに暮らしにまつわる違和感をアップデートし、言語化を試みる。SNSとリアルを泥臭く奔走し未来の暮らしを手繰り寄せていく様を、坂本龍一氏は「君たちの暮らしはアートだ」と評す。冒険で得た気づきを書籍、映画、アート、企業の広告制作など様々な方法でアウトプットしている。

 

10年で3軒の家づくりを経験。その経験を生かして編集と執筆を手がけた「あたらしい家づくりの教科書」「これからのリノベーション-断熱・気密編」(共に新建新聞社)などがある。

 

メディアプラットフォーム「note」にて「#人生とは自分にかかっている呪いをひとつひとつ解いていく冒険」にて結婚や子育てを通して感じるジェンダー問題やコンプレックスに向き合う赤裸々なコラムを連載中。最近の人気記事に「34歳バツイチ子持ち、マッチングアプリでハイスペ男子(現夫)と付き合うまでの一部始終|都合のいい女にならないと結婚できないという #呪いを解く冒険」がある。

https://note.com/bouken_life/

 

現在、愛知県岡崎市にてコーヒースタンドをオープンすべく、
クラウドファンディングを3/20まで実施中。サポートしてもらえるとうれしいです。
https://camp-fire.jp/projects/view/549726

 

Instagram  @saikocamera

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