【美しいローズをフェアトレードで】バラとの出会いで 生まれた幸せをもたらすビジネス

Way of living Women's life Lifestyle Ecology Special Interview
2021.04.29

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日本の大企業に就職するも 29歳で退社、単身アフリカへ

Text : Madoka Natsume/ Photo: Michika Mochizuki

SpringStep : アフリカのバラは、ヨーロッパではよく見かけますが、日本ではあまり見かけません。アフリカのバラは花が大きく、色も鮮やかで、茎も太い。とても生命力を感じます。そもそも、アフリカローズを立ち上げたきっかけは何ですか?

 

萩生田さん : 私は日本の高校を卒業後、アメリカのカリフォルニアにある大学に留学して、国際関係学を専攻しました。そこで、模擬国連のようなゼミに参加したことがきっかけで、世界の貧困や文化、教育などを知る機会があり、“世界の不均衡”を考えるようになりました。それまでは、“遠くの誰かの問題”だったけれど、“自分ごと”として捉え、問題をつくる側ではなく、解決する側になりたいと漠然に思いました。

 

SpringStep : 大学生でそこまで考えるなんてすばらしい。その成熟度がすごいですね。

 

萩生田さん : 貧困について調べると、先進国はさまざまな援助をしていますが、援助をすることが果たして現地で生活する人にとって本当にいいことなのか? と疑問に思うようになりました。その疑問を解決するためには、現地に行くしかない!と強く思いましたね。

 

SpringStep : では、大学を卒業してアフリカに渡ったんですか?

 

萩生田さん : いえ、そうしませんでした。私は親のお金でアメリカの大学へ行かせてもらって、とても感謝していました。大学卒業後は日本に帰国し、日本の製薬会社のグローバル人事の職に就きました。もしアフリカに行くなら、親に頼らずに自分の力だけで行きたいと思ったんです。

 

SpringStep : 日本での仕事はいかがでしたか?

 

萩生田さん : 海外出張もあり、とてもやりがいのある仕事でしたが、29歳の時にアフリカへの想いがふつふつと蘇ってきたんです。それで、仕事を辞めてアフリカに行く決心をしました。

 

SpringStep : えっ!それはまた一大決心でしたね。

 

萩生田さん: 会社の上司も同僚もみんな驚いていて、「辞めるんじゃなくて、休暇をとってアフリカに行ってみたら?」と言われたんですけど、私は短期ではなくて、長期でしっかりアフリカと向き合いたかったんです。結婚まで考えていた彼ともお別れして、マンションも引き払いました。

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援助ではなく、ビジネス としてアフリカと関わりたい

Photo : Naoko Sakuragi

 

SpringStep : 会社を辞めて、単身でアフリカへ。現地ではどんなことをしたんですか?

 

萩生田さん : 半年間、ケニアでボランティア活動をしていました。主に小学校をつくる仕事です。現場作業で、建設のお手伝いをしていました。現地での生活が慣れてきたころ、ある疑問が生まれました。それは、大学のゼミで参加した模擬国連で学んだ教育のこと。小学校を建設しても、すべての子どもが通うことができません。当時、アフリカの失業率は40%を超えていて、両親に職がないので子どもたちが家庭を支えるために働いていました。しかも、貧困地域は小学校の高学年になると、ほとんどの子どもがドロップアウトしてしまう。この現実を知った時、小学校を建設するお手伝いをするのではなく、もっと別な視点でアフリカと向き合うべきと思いました。それと、アフリカは先進国からの“援助慣れ”をしていることも痛感し、その時は頭をハンマーで殴れたような衝撃でしたね。

 

SpringStep : 確かに、援助だけでは解決できない問題はたくさんあります。点で解決しても、線にはなりません。

 

 

萩生田さん : そうなんです。ボランティア活動が終わる半年が経った頃、これから先をどうしようと考えていたとき、バラと出会いました。平日は電気も水道もない村で過ごし、土日だけナイロビに帰る生活をしていましたが、たまたまナイロビのスーパーでバラが売っているのを見かけました。日よけも穴が空いているし、花を入れているバケツも土埃りで茶色く薄汚れていましたが、バラだけは、たくましく美しかったんです。それを見たとき、とにかく感動して花を買い、家に飾りました。ただ、家に生けたはいいものの、平日は村で生活しているので、週末帰って来た時には花は枯れているだろうなって思ったんですけど、それがびっくりするぐらい元気なんです。その生命力にまた感動して、その時、「このバラを日本に広めたい!」とひらめきました。アフリカのバラを広めることで、アフリカの雇用を増やしたい。援助ではない関わりができると思いました。

 

 

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バラ生産者との契約で 交わした3つの約束とは?

Photo: Naoko Sakuragi

 

SpringStep : すばらしい! ようやく、アフリカのバラに出会ったんですね!

 

萩生田さん : でも、生産者の方も知らないし、輸出入の仕方もわからない……。まったくの素人ですけど、強い決意だけはありましたね(笑)

 

SpringStep : まず、どこからスタートしましたか?

萩生田さん : 生産者を探そうと現地の団体にも掛け合いましたが、私のような個人で、かつ小ロットの取引を希望している者は相手にしてくれませんでした。あれこれ奔走しましたが、なかかな見つからず……と苦戦していたところに、現地の知人が生産者を紹介してくれたんです。

 

SpringStep :  それはよかった!ようやく希望の光が見えましたね。

 

萩生田さん : さっそくそのバラ農園の経営者とお会いしてお話し、女性の暮らしの自立を助けることも活動の一環として、農園を運営しているのだとお聞きしました。そして従業員の方々を見ると、とにかくバラを育てる仕事を心から楽しんでいるようでした。私はその笑顔を見た時に、こんな風に仕事を楽しんでいる方々を増やしていける仕事をしたい!この農園から仕入れることで女性の自立を助けていきたい!と強く思いました。

SpringStep : 萩生田さん、日本企業では人事でしたから、人を見る目は確かです!

 

萩生田さん : ありがとうございます。取引に向けて話を進めましたが、契約する際に3つの約束を取り決めました。ひとつ目は、チャイルドレイバーをしない。ふたつ目は、環境に配慮していること。そして、3つ目が働いている方がいきいきと、楽しんでいること。働くことが単に収入を得ることではなく、仕事を通じてひとりひとりの人生が豊かになることを心から願いました。

 

SpringStep : その考え方に心から共感します。自分が好きな仕事をしながら、社会とつながりが持てたり、達成感が得られる。それをサポートしている萩生田さんに尊敬します。

 

Photo: Naoko Sakuragi 

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カーボンオフセット料金を 導入し、アフリカ植林活動

 

萩生田さん : アフリカローズを立ち上げた1、2年は、自分の給料はほとんどありませんでしたね。ただただがむしゃらに働いていました。3年を過ぎた頃、SNSを通じてお客様に来ていただいたり、雑誌やテレビなどの取材が入ったりして、アフリカローズが一気に広まりました。

 

SpringStep : 今は広尾店と六本木ヒルズの二店舗を構えていらっしゃいます。お客様に愛されているんですね。

 

萩生田さん : 今年で10年目になりますが、本当にあっという間です。いま、さまざまな取り組みをしていますが、なかでも注力しているのは、環境に関する取り組みです。バラを輸送するためには、飛行機でケニアから日本の羽田空港まで空輸していますから、どうしてもCO2を排出してしまう。前から懸念していたことだったので、今はカーボンオフシステムを導入しています。このシステムの仕組みは、仕入れたバラの重量に合わせて排出CO2を計算し、それをオフセットにするためにお金に換算するのですが、その一部(バラ一本につき5円)をお客様にご負担いただいています。こうして1本分のカーボンをオフセットできる仕組みです。もちろんこれは任意で料金をお支払いいただくかどうかはお客様が決めていただけます。支払わない場合は、アフリカローズが負担します。このお金は、ケニアの植林活動を行っている団体へ寄付し、寄付金額がどれくらいの量のCO2削減に寄与したかも公開しています。この他にも、エコバックの使用、グリーンエネルギーの使用など、SDGSにコミットした取り組みを行っています。

 

SpringStep : 萩生田さんの行動力とアフリカでのバラとの出会いで、アフリカローズが日本

広まっているんですね。ひとりでも多くの方に萩生田さんの想いが届くことを願っています。

 

PROFILE

AI HAGYUDA 萩生田 愛 / AFRIKA ROSE 代表取締役

米国大学卒業後、大手製薬会社を経て、2011年アフリカ・ケニアにわたる。「援助に慣れ切っている現地の姿」を目の当たりにし、援助ではなくビジネスとして対等な立場で関わりたいという結論にいたる。アフリカの自然や人々や文化の豊かさと生命力あふれるバラに魅了され、2012年「アフリカの花屋」を立ち上げる。2015年10月アフリカバラ専門店「AFRIKA ROSE」を東京・広尾に、2019年4月に六本木ヒルズ内に「AFIKA ROSE&FLOWERS」をオープン。草月流いけばな師範。著書に「アフリカローズ 幸せになる奇蹟のバラ」(ポプラ社)がある。

https://afrikarose.com

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