「あなたは元の世界に戻りたい?」アフターコロナへの願い。四角大輔 連載05

Way of living Lifestyle Ecology
2020.06.11

1

人類強制フルリセット

Photo : Spring Step 

 

今みなさんは、どのように過ごされ、なにを思われているだろうか。

 

もはや「懐かしい」とまで感じるかもしれないが、いま一度あのステイホームの日々を思い出してもらいたくて、この原稿を書いてる。

 

あのころはよく「今しかできないことをしてね。元の生活に戻ってからできることはやらないで!」と繰り返し発信していたことを思い出す。

 

普段はそろうことのない家族と24時間ずっと一緒だったり、または、たった一人で自宅待機を強いられたり。

遠くに暮らす親や子に会えず、近くにいる友と集えない寂しさ。

街で大好きな仲間に遭遇しても、ハグや握手ができないあのもどかしさ。

 

なにより、命を落とすかもしれないという恐怖、大切な人の無事を想うときの不安感、この先どうなるかまったく見えない緊張。

 

それぞれが置かれた状況は、それぞれに違っただろうが、誰もが過去にないくらい複雑なことを感じては落ち込み、これまで味わったことのない感情に襲われたはず。

 

ぼくは今回のコロナ禍を、「人類強制フルリセット&再起動」と捉えている。

この星に生きる種族として、国として、組織として、そして個人としての「身の丈サイズ」を見直す大きなきっかけになったと思うのだ。

 

今回の惨劇はぼくら人類の行いに原因があり、その結果、とり返しがつかないほど深刻なダメージを受けてしまっている。

だから絶対に、このまま終わってはいけない。ぼくらは深く反省し、ここから学んだことを、やってくる新しい世界に生かさないといけない。

 

そして、そんなさなかに起きた、米国の警察によるジョージ・フロイドさん殺害事件。

世界を震撼させたあの映像をみて以来、ぼくの心はずっと震えていて、ひどいくらい涙もろくなり、毎日一度は泣いている。

 

そして、これまでにないくらい、人類全体が怒りと悲しみに震えていて、その波動が、ぼくが暮らすニュージーランドの人里離れたこの森まで伝わってくるのだ。

 

世界中でデモや抗議活動が同時多発的に行われ、いまこの瞬間も、人々の話題の中心となっている。

「どうしようもないこと」として多くがあきらめかけていた、でも決して「なかったこと」にすべきでない人種差別に、人類の意識が一気に集合している。

 

ぼくに言わせると、奴隷制度とは「世界史上もっとも残忍で、極悪非道な人類の罪」。

この事実を改めてしっかり学び直して反省し、よりよい社会を創るために行動したいと思う。

 

でも、そう考えるのはきっと、ぼくだけじゃないはず。

同じように思索し、祈る仲間たちが、世界中にいることだろう。

2

市民を守るのは国か、自分たちか

Image: Shutter stock 

 

日本では、全国で緊急事態宣言が解除されてから2週間以上が経ち、ロックダウンが先行していた欧米でも、外出禁止令が順次解かれて、みんなの顔に笑顔が戻りつつある。

 

ここニュージーランドでは、この原稿を書いている今日から「レベル1」へ移行(6月9日)。

誰もが仕事に戻れて、すべてのお店が通常営業。国内移動が完全自由となり、大きなイベントも開催可能になるなど、暮らしは日常に戻る。残るは国境封鎖くらいだ。

 

この国は、死者ゼロという早期に5週間の厳格なロックダウンを敢行。

さらに、2週間の準ロックダウンを経て、若干の規制が残る「レベル2」が続いていた。

 

そして、直近18日間は新型コロナの新規感染者が連日ゼロを記録し、ついに治療中だった最後の陽性者が回復したというニュースが全国を駆けめぐった。

その報道にみんなで歓喜し、国土がコロナフリーになったという事実を国民全員で讃え合っている。

 

とは言え、コロナはいまだ猛威をふるっており、南アジアや南米などの途上国へ飛び火して甚大な被害をもたらしている。

6月7日の世界での新規感染者が13.6万人と「1日としては過去最多」を記録。これを受けてWHOは、「パンデミックは悪化している」との声明を出している。

 

ちなみに、6月9日現在の感染者数は709万人で、死者は40.56万人となっている。とんでもない大惨事だ。

 

さらに、今回のウイルスにはまだまだ未解明なことも多く、パンデミックには大きな第2、第3波がつきまとうもの。

この先どうなるかは、どんな偉い学者にもわからないというのが現実だ。

 

今日だけは幸運に感謝しながらも、明日から引き続き気をゆるめずにいたいと思う。

 

ぼくはこの2ヶ月間、赤道を挟んでちょうど反対側にあるこちら側から、日本の様子を祈るような想いで見ていた。

 

「国の決断」がぼくらを守ってくれたニュージーランドに対し、日本では「医療従事者やクラスター対応班、ゴミ処理・配送・食料生産といった必要不可欠な業務に就く方々、そして市民の努力」によって被害を抑え込んだと言い切れる。

尊敬すべき南欧諸国、英国、米国では、国を挙げて対応したにも関わらず多数の犠牲者を出したのに。

 

日本人ならではの清潔さや我慢強さ、他者を気遣う共感力や団結力には感動を覚えるほどだった。

 

みなさん、わが母国と愛する家族や友人たちを救ってくれてありがとう。

この場をお借りして、心から感謝の気持ちを伝えたい。

3

浮き彫りになった「あたりまえ」の真実

photo : Nahoko Morimoto 

 

今回のコロナ禍は、

「わかってはいたけど、見てみぬふりをしていたこと」を突きつけ、

「あたりまえのごとく、そこにあったこと」を可視化してくれた。

 

自身の命を預けている国家や政治の不透明さ。

人生ごと依存している貨幣制度や経済の脆弱性。

社会のあちこちに存在する理不尽や許しがたい矛盾。

 

これと同時に、いくつもの大切なことを気付かせてもくれたはず。

 

最低限のちゃんとした食事。

じゅうぶんな睡眠と適度な運動。

雨露をしのげる家屋とミニマムな衣類。

これらさえあれば、健康でいられることを。

 

そして、愛するパートナーや家族さえ隣にいれば、他にはなにもいらない。

海外旅行ができなくても、晴れた日に近所を散歩できれば、それだけでじゅうぶんであることを。

 

誰もが、前述の「あたりまえ」の恐ろしさに震え、これら「あたりまえ」の尊さに感謝をしたはず。

少なくとも、ぼくはそうだった。

 

「変えるべきことを変えるために、生き方を変える」と覚悟を決め、

「これさえあれば生きていける」という禅的な感覚を身につけた人間は強い。

 

そういう意味で、世界をいい方向に導くために、幸せに生きるために、ぼくら人類がより気高く、たくましくなるための大きな学びを得られたのではないだろうか。

 

ここで、21世紀に生きるぼくらが置かれている状況を客観的に見てみよう。

 

便利すぎる都市生活と、過剰な大量生産・大量廃棄ライフ。

そんな社会を支えるための資源の略奪と環境破壊。

 

そんな蛮行の因果応報として、さまざまな厳しい現実が、ブーメランのように鋭い刃となって、ぼくらの胸元に返ってきている。

 

獣のウイルスが人を襲う未知の感染症が次々と発生し、ゴミによる環境汚染やマイクロプラスチックの人体汚染、気候危機による天変地異などは、ほんの一部。

他にも、無数ともいえる問題が目の前で起きていることは、ご存知のとおり。

 

社会の変化スピードが加速して「不確実な世紀」に突入して20年が経ち、このコロナ禍を受けて、この先さらに予測不可能となるだろう。

だが、少なくとも言えるのは「ビフォーコロナとまったく同じ世界に戻ることはない」ということ。

 

時が止まったかのような、不思議な気持ちになったあのステイホームの日々。

誰もが自分が生きる「社会のあり方」のことを考え抜き、自分の「命=時間」の使い方を考え直したはず。

 

そして、不便やさみしさはあっただろうが、穏やかな時間を過ごせた人は決して少なくないだろう。

4

世界同時の神秘体験を忘れない

photo : Spring Step 

 

ここニュージーランド山奥の湖畔で営む自給自足ライフでは、ロックダウン前も、ロックダウン中も、そしてロックダウン後も、変わらぬ時間が流れている。

 

それでも、ぼくにとってあの日々は神秘的な体験だった。

目には見えない世界中の人々と集合意識でつながり、「それぞれの空間で、自分自身や家族と向き合う時間」を一緒に過ごす特別な時間だった。

 

多くの人たちが同時多発的に、これまで外へ外へ向きがちだった意識を、それぞれの「内側」へ向けられたこと。

どんなに大量の外部情報をあさっても正解を見つけだせることはないこと。

たくさんの人と会い、どんなに他人と社交しても、心の平穏を得られることはないこと。

 

そして、「本当の答え」は決して外にはなく、自分の中にしかないこと。

これらの真理を、改めて思い出した人がたくさんいることをぼくは知っている。

 

英国の世論調査では、「元の生活に戻りたい」と答えたのはわずか9%だったという。

今回の世界的な悲劇を受けて、ぼくらのさまざまな「行き過ぎた行為」に気付くきっかけになってほしい。

 

日本人にとっては、「足るを知る」という美しい言葉を思い出させてくれる貴重なきっかけであり、個々が「身の丈」に合う美しい生き方にシフトするチャンスだと信じている。

 

あの神聖な日々に感じたこと、思ったことは絶対に忘れたくない。

大事なのは、「アフターコロナがどうなるか」ではなく、「アフターコロナをどんな世界にしたいか」だと思っている。

 

みんなで一斉に思い、強く願えば、それが大きな集合意識となって社会の流れを変えることは可能だ。

 

「100匹目の猿現象」をご存知だろうか。

まず、一匹の猿が、海でイモを洗うことを覚える。同じ群の仲間たちも「それはいい!」と真似をし始め、少しづつ群に伝播していく。

 

その数が臨界点(100匹くらいとされる)を超えてからは、同じ行動をする猿の増加率が一気に高まるというもの。

するとそのあと、遠く離れた別の群も同じような行動をはじめるという。

 

これって、単なる不思議な物語じゃない。

人類こそが、そうやって進化してきたのだから。

 

たとえば、約1万年前、お互いの存在さえ知らなかった世界各地に散らばる各文明が、同時多発的にそれぞれの土地に合う作物を栽培し始めたのだ。

そして、ゆっくりと人類全体が狩猟採取から農耕生活に移行していったのである。

 

長い人類史を見ると、同様のことが何度も起きている。

 

つまり、みなで真剣に「種としての理想」を想像し、それに向かって行動すれば、まったく新しい社会を創造するのは可能ということ。
さらに現代はネットによって、ぼくらはいつでもつながることができる。まさに今、世界同時に「#BlackLivesMatter」と叫んでいるように。

 

そして、ぼくが目指したい理想は、頭の中でほぼイメージできつつある。

そのことは、またどこかで書くつもりだが、ここでは「Slow, Small & Simple」というキーワードと、「まったく元の世界には戻ってほしくないと思っている」 とだけ伝えておきたい。

 

あなたは、今なにを思い、なにを願うだろうか。

 

もしよかったら、忘れないよう、それを書きとめておいてほしいんだ。

できればそれを声に出し、行動してみてほしいと心から願う。

 

きっと今回が、世界を再起動させる最後のチャンスだから。

 

 

ニュージーランド湖畔の森より愛を込めて

四角大輔

 

連載01:「2000万枚のプラスチック製品をバラまいたぼくが、森に暮らすわけ」

連載02:「オーガニック&サステナブルライフ〜自給自足への挑戦」

連載03:「なぜ、森の生活でベジタリアンになったのか」

連載04:「ニュージーランドにみる〝女性性〟とサステナビリティ」

 

 

PROFILE

四角大輔 Daisuke Yosumi

ニュージーランド湖畔の森でサステナブルな自給自足ライフを営む執筆家。エシカルな現場を視察するオーガニックジャーニーを続け、65ヶ国以上を訪れる。Greenpeace Japan&環境省アンバサダー。

人生やらなくていいリストLOVELY GREEN NEW ZEALAND』『バックパッキング登山紀行』『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』『モバイルボヘミアン』『The Journey』など著書多数。レコード会社プロデューサー時代には、10度のミリオンヒットを記録。オンラインサロンLifestyleDesign.Camp〉主宰。Instagram&公式メディア:4dsk.coポッドキャスト〈‪noiseless‬ world溢れるノイズに負けず、自分の世界を取り戻してもらうため、四角大輔が湖畔の森から語りかけます。

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