【薬膳料理家に聞きました】食べること、そしてその先にあるもの

Beauty Lifestyle Special Interview
2020.08.20

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食べるものの価値は自分で決める

Photo: Yuki Aoyama©️

Spring Step : 初めに「食べること」についての有紀さんの哲学を教えてください。「食べること」とは人間にとってどういうことなのか、まずはそこを理解してから「じゃあ、何をどうやって食べる?」につながっていくと思うんです。

 

青山有紀さん(以下、有紀さん) : 私の哲学というか、宇宙の流れというか、よく言われていることではありますが、意識をどこに持っていくかが大切だと思います。「何を食べたら健康になりますか」という質問や、食材や調理法について聞かれることが多いのですが、やはり「食べなきゃいけない」と思って食べていたり、好きではないものを無理やり食べるのはすこし違うと思います。

自分がもし食べ物だったら、歓迎されずに食べられて「しっかり働こう!」なんて思えないですよね。作る時も食べる時も楽しく!

 

食材については、私はオーガニックの食材を選ぶようにはしていますが、例えばオーガニックのものが手に入らなかったときに、「オーガニックでないからダメだ」とか「この食べ方ではダメだ」と思ってしまったら、その時点でダメなものになると思うんです。結局、食べるものの価値は、作る人や食べる自分が決めるのです。

 

Spring Step : それが本当の意味で「いただく」ということなのですね。

 

有紀さん : 「なんとなく食べる」と身体は変化を感じにくいと思います。食べたいものを自分で決める。料理も難しくすればいい、というわけではなく、作っている工程も実はすごく楽しいですよね。

 

お教室の生徒さんにもよく話すのですが、今の時期野菜がすごく柔らかくて香りも良いので蒸籠で蒸すんですね、蒸して開けた時に野菜がツヤツヤして色っぽいんです。自分の水分で自分を蒸したその姿とか、香りとか。その湯気を浴びることで、私は毎日感動するんですよ。そういうことを楽しいなと思う時間の積み重ねが、健康に繋がっていくと思います。

 

Spring Step : 植物の蒸留と同じですね。

 

有紀さん : はい。それをまた直接口から身体に入れる。喜びとともに身体に入れられたら喜びのエネルギーになるし、ちょっとでもネガティブな気持ちを入れてしまうと、ネガティブに働いてしまう。量子物理学の世界でもそうですが、結局全ては波動と言われるものなのかもしれません。目に見えないけれど、目に見えないもので私達はできているから、何を入れたいかを決める自由があるということ。

 

今こうやって時間があって、料理をしたり、自分の身体を想えるこの時を、もともとみんなが持っている魔法みたいな技に気が付ける時間にできたらいいのかなと思います。

 

Spring Step : 食べ物自体は変わらなくても、食べ物という「物質」を目の前で見た時に、私たち自身がその食べ物の価値を作るということですね。すごく面白いです!

自分でどうにでもできるという大前提を私たちがまず知る必要がありますね。「あれを食べないとダメ」「これを食べてはダメだ」「色々食べないとダメだ」と、自分で食べ物の価値を低くしながら食べていては変わらないですよね。

 

有紀さん : そうなんです。もちろん薬膳のように組み合わせることで活かせるという素晴らしい世界もあるのですが、結局は作る人が楽しくやること。きっと「やらないといけない」とか「何かしないといけない」という気持ちは、本来のエネルギーとは違って歪むので、食べ物の力が活かせないんですよね。

 

Spring Step: そうなると、「○○しなければならない」というのは黒魔術とも言えますね。

 

有紀さん : みんな現在色々な気持ちを抱えているとは思いますが、「Have to」のエネルギーはものすごく身体に悪いんです。

 

Spring Step: 食べ物に限らず、仕事でもそうですよね。

 

 

有紀さん : 私もそうだったんです。CHICOさんも来てくれていた東京のお店「青家(あおや)」は、自分の店でもあったし、亡くなった姉が作った店でもあったので、姉がなくなってから13年間ずっと潰してはいけないという思いでやっていて、その中ですごく「have to」が強くなってしまい、朝起きてから「やらなければいけないこと」があまりにも多くて、「やりたいこと」と「やらなければいけないこと」の区別がつかなくなってしまったんです。一旦自分の中で整理しようと思い、私の場合は全部紙に書くことで整理できるので、「Have to」「Want to」 を書き出してみました。「やらなきゃいけないこと」と「本当にやりたいこと」を書き出した時に「お店を辞めよう」と思ったんです。

 

例えばイチローさんは、「Want to」で子供の時から野球選手になりたくて、「Want to」の中に「毎日素振りをしなきゃいけない」という、たぶん他の人から見たら「Have to」になることも「Want to」の中にある素振りだから続けられたと思うんです。他の人にとっては、「これって結構大変なんじゃない」と思われることも自分にとっては「Have to」でははなかったり、逆にみんなから「いいな」と思われることも自分は好きではなかったりする。例えば私は、こういうインスタライブでも緊張しますし、数年前から続けている料理教室もいまだに前夜眠れないほど緊張することがあります。逆に作ることに関しては仕事と遊びの境目がなくて、すべての工程がワクワクで「Want to 」でしかない。

 

生き方だけでなく食べ方も同じで、世の中には色々な食養生があって、例えばアーユルヴェーダとかすごく素晴らしいものではありますが、それを守ろうと必死になって「Have to」になってしまうと、その途端に全ての意味合いが変わってしまいます。

 

Spring Step: ゴールが「やること」になってしまうのではなく、何のためにやっているかのか、行きたい場所、やりたいこと、なりたいことを自分の中に持っていれば、「やらなくちゃいけないこと」ではなく「これをやればもっとすごいことになる」と思えるものになりますよね。

 

有紀さん : 料理も「三食絶対に作らないといけない」と思うと、すごく苦しいことになりますよね。例えば、以前お弁当教室を開いたときに、お弁当を10年作り続けてすごく苦しかったと話すお母さんがいらしたんですが、さっきの蒸し野菜の話もそうですが、湯気を浴びた野菜の恍惚とした姿なんて、作っている人しか実は味わえない楽しみなんですよね。

 

Spring Stepでも一度お弁当の取材をしてもらいましたよね。レシピ、今も残っていますか?

 

Spring Step: もちろん! まだ有紀さんのお弁当レシピを見てない方はこちらから見てください。

 

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お弁当は社会の縮図!?

 

有紀さん : 例えば、お弁当でいうと、野菜が自分の手を離れてから育つまでのワクワクする時とか、そこに隠された楽しさは「Have to」の中では絶対に見えないもの。洗い物ひとつでも、私は料理の全ての工程に楽しさや発見がいっぱいあって、どう効率よくするかとか、自分がお皿だったら・・とか考えることが無限に楽しいんです。そうゆう気持ちで料理をすれば、すごく元気になりますよ。

 

Spring Step: 私は有紀さんにお弁当の取材をさせていただいた時に、その場で食べさせていただき、もう一つは、持ち帰らせてもらいました。驚いたことは、その場で食べた時の味と、持ち帰って数時間後に食べた時の味が違ったんです! それで有紀さんが言っていたことが理解できました。和気あいあいと作ってもらったものが箱の中に集まって、箱の中でみんな仲良くなって味が染み込んで、お弁当自体が熟成されていった。たぶんそれはうま味成分が関係しているとは思うんですが、数時間前に食べたお弁当とは違う! と驚いたのを覚えています。

 

有紀さん : まさに“和気あいあい”ですね。自分の力で何とかしようと思うと、そこまでですが、自分の力を超えたものがあるということを知ってしまうと慌てなくなりますし、過度な味つけもしなくなる。みんな味つけで慌ててしまいがちですが、味つけなんて最後にすればいいんです。

例えば、野菜スープ。野菜だけでスープを作ると味が足りない気がしてブイヨンを入れてしまいますが、それはすごく勿体ない。その瞬間にいつもの味、つまりブイヨンの味になってしまいます。安定した味で安心かもしれませんが、野菜同士でしか味わえない味を知らないまま人生を生きていくことになるなんて、勿体ないです! 委ねる気持ちがあれば色んな発見がありますよ。

 

昔、「お弁当の社会は宇宙だ」という話をしていたと思うんですが、今まさにそのことに気がつける時だと思います。味に限らず、例えば教育でも何でもそうですが、みんな同じようにしようとすると、学校へ行きたくない子がでてきたり、すごくしんどくなります。

その人にしかない輝きを放つように、その素材にしかない個性を活かせば、お弁当に詰めた時にみんながそれぞれのパートを請け負ってすごく仲のいい社会ができるんです。

 

Spring Step: まさにコミュニティですね。

 

有紀さん : みんながお互いを引き立てあっている。私のお弁当は仕切りを一切使わないのですが、それはまさにこれからできる社会の縮図ではないかと思っています。

 

誰かに合わせるとか、自分じゃない何かになろうとかではなくて、持って生まれた自分の個性、中に秘めているもの、そこに集中すれば、きっと自分にできないことを誰かができて、誰かができないことを自分がサポートできたりして、社会がみんな綺麗に、うまくお弁当の中みたいになるんじゃないか。まさに今そういうところに向かっていると思います。

 

Spring Step: ブイヨンのように均一を目指すのではなく、ということですよね。

 

有紀さん : そうです。そして、慌てないこと。みんな答えをすぐに出したがるので、味つけも急いでしてしまってブイヨンを慌てて入れてしまったりするのですが、自分の手から1回離して少し違うことをしている間に、素材同士が自分たちの社会を作ってくれて、しばらくたって食べたらものすごく美味しくなっていることがよくあります。お弁当もそうです。時間を置くということには、そういった素晴らしさがあります。

 

「お料理慌てちゃう」とコメントで書いてくれている人もいますが、全部すき焼きの味になってしまうとか、全部茶色になってしまうというのは、味が馴染むまでに待たずに素材の上に被せる味つけになってしまうから。だからお料理の楽しさも減ってしまうんだと思います。味が決まらない時は慌てないで少し時間を置き、最後に味付けをすればいいんです。

 

作る人が食べ物の価値を決めている。食べる人も食べる時に自分でその価値を決めている。いつも身体に良いものを食べているのにあまり健康そうにみえない人もいれば、食べ物に細かく気を使っていないのにいつも元気な人もいますよね。

波動を自分で決めて取り入れられる人は、何を食べていても元気なんです。

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身体は自分の気持ち次第で変えられる

 

Spring Step: 私は30歳で食事療法を始めて劇的に身体が変わりました。すごく太りやすい体質だったのが、3年間ローフード中心の生活を続けて、むくみにくい身体、水分を溜めにくい身体、疲れが残らない身体になりました。はじめの1、2年はほとんどお肉を食べずかなりストイックにやっていたのですが、決して無理していたわけではなく、食材が美味しかったので楽しくできました。そうなると、がんばって何かをしなくても健康なんですよね。ただ、有紀さんが言っている「食べ物の価値を決める」ということは、私の中でも変化がありました。以前は、100%ヘルシーな食事以外は、「毒を食べている」と思いながら食べていたから、むくんだり、頭痛になったり、本当に毒になっていた気がするんです。でも今は、子供のおやつでも何でも一緒に食べていますが、全くなんともないのです。

 

有紀さん : 食べ物の“喜び”を食べるような循環ができれば、自分の身体にちゃんと巡っているという自信がつく。食べる時に「これを食べたら太る」といった恐怖感がなくなります。ネガティブなことを思わなくなるんですよね。

 

みんな今免疫力が気になると思いますが、美味しいなと思いながらちゃんと食べられていて、ちゃんと便が出て、ちゃんと寝られていたら心配ないと思います。免疫力って快便・快眠ができていれば問題ないんです。「これを食べてはダメですか」と人に聞いたり、心配を常にしている方は、外に意識を持つよりも自分の身体との繋がりをもう少し持った方が、良くなれると思います。

 

Spring Step: そうですね。例えば、甘いものが食べたいと思うのは、もしかしたら鉄分不足かもしれない。こうなったら良くなるとか、自分と食べ物の関係性を育むということですよね。

 

有紀さん : 食べ物もそうですが、私達は目に見えない微生物でできているので、自分とは違う意思を持った微生物、菌達とどのように仲良くなるかということだと思います。腸内細菌とか、膣の中の菌とかも同じです。目に見えないけれど、目に見えないものに私達は生かされています。

目には見えないけれど存在しているものとどれだけ自分が仲良く、気持ちを繋げるかが大事。それが、自分が食べる時にどこに意識を向けるかの違いだと思います。

 

もちろん食べ物には効能があるし、組み合わせ次第で活かしたり、効能を弱めたりすることもできます。3000年前から中医学の人達が勉強をしてくれていて、それを私も伝えたくてお教室をやっているのですが、そこに意識を持っていかれすぎてしまうと、自分自身が本来持っているものすごい力が活かせなくなってしまう。食べ物を薬に変えられる力。自分の気持ち次第で自分の身体を変えることができるし、家族にその波動を入れることができる。逆を言えば、人を弱めることもできる。それができるのは魔女だけじゃないんですよ。

 

女性は特にその力が強いと思います。人間誰でも、男性性と女性性があると思いますが、女性性は創造性のパワーを持つので、自分で腹を決めるというか、自分で決めて身体に入れる。その責任が自分にはある。いつも働いてくれる細胞を喜びのエネルギーにするのか、不安な気落ちや嫌だなというネガティブな気持ちにするのか、ここだけは最後自分で決めることで、全く同じものを同じ組み合わせで食べていても、すごく健康になっている人とそうでない人がいるのは、そこに違いがあるんです。

 

Spring Step: 今は前向きなニュースが少なくて、不安に思っている人が多くいると思いますが、例えばご飯を作る時や作る前に「これを見ると元気がでる」「これを聴くと忘れる」というものを見たり聞いたりすることで気分を変えて、気持ちよく料理を作れたらきっと家族にもとても良い影響がありますよね?

 

有紀さん : まさにそういうことです! 気分をバッと入れ替えられるアイテムとかをいっぱい持って訓練すれば、切り替えも早くなりますよ。

 

Spring Step: 今日からの残りの人生、身体の見つめ方を変えることで、すごく違うものになりそうですね!

 

2020年8月に、青山有紀さんが京都に新しくアトリエをオープン!

京都青家オフィシャルウェブサイト

 

※このインタビューは、4月16日に青山有紀さんと編集長のCHICO SHIGETAがインスタライブで行なったトークを記事にしたものです。

 

 

PROFILE

青山有紀 Yuki Aoyama / 薬膳料理家

 / 料理家、国際中医薬膳師

元青家オーナーシェフ。京都市内で料理屋を営む母と韓国薬膳に精通した祖父母に囲まれて育つ。

生まれ育った京都のおばんざいと幼い頃から食べてきた韓国家庭料理の素晴らしさを伝えたいと、美容業界を経て2005年東京中目黒に京おばんざい屋「青家」を、2010年京甘味処「青家のとなり」をオープン。現在は2店舗ともに閉店し、京都にてアトリエをオープン。

料理本18冊(毎月の薬膳ごはん12か月の薬膳レシピ薬膳で楽しむ毒だしごはん毒出しベジべんとう)、京都案内本1冊出版。企業の商品開発、雑誌や企業へのレシピ提供、講演会など行っている。出身地の京おばんざいとお菓子を中心に、ルーツである韓国料理、薬膳料理、インド伝承医学

アーユルヴェーダにも従事している。

京都青家オフィシャルウェブサイト

Instagram : @yukiaoya

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