【エシカルのリーダーに聞きました】私たちが今日からできる、エシカルな取り組みってなんですか?

Way of living Women's life Womens life Lifestyle Ecology
2020.12.10

1

地球はひとつ。私たちはみんなつながっている

 

TEXT: Madoka Natsume / Photo : HAL KUZUYA  

 

〔本インタビューは、リモートで行われたものです〕

 

SpringStep: TBS系の人気番組『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして長年活躍されて、世界中の国を“ハンター”しました。そして、現在は、エシカル協会の代表を務めていらっしゃいますね。

 

末吉さん: ミステリーハンターとして10年ちょっと務めたんですけど、その中で私は“秘境班”担当でした(笑)。プライベートの旅も含めて、80か国ぐらいの国を旅をし、その中で、私なりに共通する点を見出しました。この世界は、一握りの権力とか利益のために、美しい自然や立場の弱い方が犠牲になっている構造だと気づいて、すごく心が痛んだんですね。その中で、私の人生のターニングポイントとなったのが、ミステリーハンターとして、2004年にアフリカ・タンザニアになるキリマンジャロに登った経験でした。それまで私は600mの高尾山ぐらいにしか登ったことがなかったので、肉体的にも精神的にも厳しいものでした。頂上に氷河があるんですけど、科学者の発表で2010年から2020年の間にその氷河が温暖化によって溶けてしまうという発表があり、それを取材するという内容でした。登り始めた1900m地点にそこで暮らす子供たちが通う小学校があり、1本1本子どもたちが「キリマンジャロの氷河がまた大きくなりますように」と祈りながら木を植えていたんですね。当時から彼らは氷河が解け始めていることをすでにわかっていたんですね。その氷河の雪止め水が彼らの生活用水になっていたので、なくなってしまうともう生きていけないわけです。子どもたちから、「僕たちは頂上まで登れないから、氷河が今どんな状態なのか見てきて」と言われました。なかなかハードな登山でしたが、何とか頂上にたどりつき、その光景があまりにもショックでした。すでに氷河が減退していて、当時あるはずの氷河が1割か2割ぐらいしかなかったんです。

 

SpringStep: えっ!すでにそんなに少なくなっていたんですね。

 

末吉さん: そうなんです。氷河を見たとき、結局、地球はひとつで私たちはみんなつながっている。よく“バタフライエフェクト”と言われていますが、地球の裏側で蝶が羽ばたくと、その裏側まで余波がいくんだなと実感しました。もしかしたら、日本で暮らす私たちも影響を与えていたのかもしれないと思ったら、居ても立っても居られなくなりました。出会った子供たちの姿も浮かんで、私はライスワーク(食べるための仕事)ではなく、ライフワーク、一生を通じて今起きている現状を日本の方に伝えていこうと決心しました。伝えるだけではなく、解決に導くような活動をしたいなとキリマンジャロの頂上で決心をして、日本に戻りました。そこから団体を立ち上げるまでは10年ぐらいかかりましたけど、そこでフェアトレードに出会って、日常を通じて世界が抱えている問題、途上国で暮らす人たちを支援していくことができるというのが素晴らしいと思いました。すごく大きな活動ではなくても、日々の暮らしの中、消費行動で変えていくことができる力があるということを知って、そこから大きな環境問題をいうテーマから、生活に根付いた消費や暮らしというところにフォーカスをあてました。「フェアトレード・コンシェルジュ講座」を2010年に開いたところ、すごく反響があって仲間が増えました。2015年に記念すべき第一回目の受講生ふたりと一緒に協会を立ち上げました。

2

地球の一員として感じながら、行動する

 

SpringStep: エシカル協会は、今年で5周年なんですね、おめでとうございます。私も実感していますが、何かを立ち上げるときって、立ち上げることよりも続けることのほうが大変だったりしませんか?

 

末吉さん: 本当にそう思います! 情熱や意欲があれば立ち上げることはできると思うんですけど、継続しながら、それが立ち上げた時よりも育まれているかって難しいですよね。

 

SpringStep: 続けていくこと、情熱を持ち続けていくことのモチベーションって課題があることかと思います。この協会を通して、広げていきたいことは何ですか?

 

末吉さん: 今はエシカルの考え方、エシカル消費について一般の方に広く伝えています。どうやったら暮らしにエシカル消費を取り入れることができるのか、ライフスタイル全体としてエシカルな考え方をどうやって取り入れていけばいいのかなどを伝えると同時に、消費者が選びやすいように事業者側にも働きかけています。なので、事業者と生活者をつなぐような役割も担っています。また、基本的に普及啓発の団体なので、“教育”という部分も大事にしています。大人だけでなく、子どもたちも含めて考えを知ってもらうための機会を提供しています。これからさらに力を入れていきたいことは、エシカルで持続可能な社会を求めているコミュニティ(仲間)をさらに育んで、例えば、社会システムを形成している制度だとか法律などを変えていくような、声を届けたいと思っています。私たちは市民の力として、民意を届けて“ひとりひとりの力で変えていけるんだよ”ということを知ってもらいたい。エシカルな社会、持続可能な社会を築くときに、市民として社会の一員である、地球の一員であるということを感じて行動をしていかないと変えることはできません。

3

見えないところや人、生き物などを想像して、思いをはせながら暮らす

 

 

Photo: Nahoko Morimoto 

SpringStep: 社会を変えていくためのボトムアップの実現を考えているんですね。では、そもそものところなんですが、末吉さんはエシカルについてどう捉えていますか?

 

末吉さん: 今、私たちが捉えているエシカルは、『人や地球環境、社会や地域に配慮した、あるいは思いやりのある考え方や行動のこと』としています。例えば、エシカル消費というのは、地域の活性化や雇用などを含む人や地球環境に配慮した、または思いやりを持った消費行動のことといっています。本当に様々なエシカルの形があって、エシカル消費ひとつとっても、オーガニック、フェアトレード、地産地消、リサイクル、アップサイクル、再生可能エネルギー、伝統工芸など、テーマが多岐にわたります。ですから、「唯一の正解はない」。伝えるのが本当に難しいんですけど、でも日本はそういう言葉が結びついていないだけで行動している人は結構いるかも知れない。日本は、“もったいない”、“思いやり”、“お互いさま”とかそういう精神性があって、それってほぼエシカルなんですよね。

 

SpringStep: 確かに、そうですよね!

 

末吉さん: でも、当初エシカルってなかなか覚えにくいキーワードなので、私たちの団体では、“エいきょうを、シっかりと カんがえル”というスローガンをつくって、その頭文字をとって「エシカル」としました。だから、エシカルのためにたくさんお金を使ってくださいということではなく、日々の暮らしの中で、例えば仕事の中で、「その影響ってどんなところに及ぶのかな」って考え続けながら、見えないところや人、生き物などを想像して、思いをはせながら暮らしていこうっていうのが、エシカルなのかなって思います。

 

SpringStep: それぞれの判断基準、個人の判断基準を育むことが大事になりますね。そこも結局、教育なんですよね。情報やニュースをインプットしないとなかなか難しいかも知れません。

 

末吉さん: 本当に! まさにそうなんですよね。未来というのは、子どもたちのものですから、大人だけでなく学生や子どもたちにも啓発しています。

 

SpringStep: 確かに! 絶対そっちのほうが早い気がします。子たちのほうが頭の中が柔軟なのと、お金で解決することをしらない人のほうが、もっと基盤が違うと思うんですよね。

 

末吉さん: 2021年に中学校、2022年高校の教科書が改訂になりまして(4年に1回改訂される)、その中にエシカル消費について掲載されることが決定しています。授業で学ぶ日がそこまできているので、どんどんインプットできるといいなと思っています。一方で、大人たちは取り残されていく可能性もありますから、若い世代と一緒に取り組めるような土台を作っていくべきですね。

 

SpringStep: 学校で取り組んでいくなんて、すごい進歩ですね!

 

末吉さん: そうなんです、もう小学校の教科書には「SDGs」についても取り上げられています。じつは、教科書の新学習指導要領の中の前文にはじめて「学校は持続可能な社会をつくる担い手を創ることが求められる」と記載されました。これはとても大きな意味をもっていますが、さらに実践的な取り組みをどのように行っていくかは教員の手腕にかかっていますが、私たちの団体も何かサポートできることがないかと考えています。

4

社会に向けて、ポジティブな声を発信すること

 

 

SpringStep: 日本では「SDGs」という言葉が流行ったころに、コロナがやってきて意識がよりエシカルの方向に動いているように思います。

 

末吉さん: 1年半ぐらい前からSDGsやエシカルという波がやってきて、潮目が変わったなという実感はあります。コロナになったことでより関心度が高まったと感じています。きっとそれはひとりひとりの時間ができて、自分の生活とじっくり向き合うという今までにない経験ができたこともありますし、その中で“見えないつながり”というものを感じたからだと思います。このコロナ禍になって、“自分だけが健康であればいい”という考え方ではなく、”周りの人も健康でなければ、自分も健康でいられない“と思うようになりました。そして、今、エシカル消費に関してもたくさん企業から問い合わせがあり、リモートで数えきれないくらい講演をしています。また、年2回開講している「エシカル・コンシェルジュ講座」も、今までにないほどの受講生の数になっています。

 

SpringStep: そうなんですね、何歳くらいの方が多いんですか?

 

末吉さん: 下は中学校1年生から受講しています。また、以前は女性が多かったんですが、男性の方、企業に勤めてらっしゃる方も増えていますね。

 

SpringStep:  ある意味、どんな職種、どんな立場でも、その人ができるエシカルが必ずありますよね。

 

末吉さん: そうですよね、それぞれの立場でできることってたくさんあります。ぜひ、ひとつでも実践してほしいなと思います。

 

SpringStep: 今は、意識の変化が起きたということですね。

 

末吉さん: はい、そう思います。この流れをコロナの前に戻るのではなくて、withコロナの時代は、“新しい幸せのものさしを持とう”と。エシカルな暮らし方が幸せのものさしとなっているような持続可能な社会を実現したいと、我々協会のミッション、使命でもあります。

 

 

SpringStep: そういう方が増えていく社会を末吉さん自身も望まれていますか?

 

末吉さん: はい。ただ当然、途上国ではそういうところまでできない方たちもたくさんいます。SDGsでは全世界の人たちと一緒に、誰ひとりとして取り残さずということでやっていますが、先進国で暮らす私たちはより努力が必要です。

 

SpringStep: では最後に、すでにエシカルに一歩取り組んでいている方に、さらに2歩、3歩と実践できることってどんなことでしょうか?

 

末吉さん: お金を使わなくてもできることで、しかもものすごく効力がある行動です! それは、私たち消費者、生活者としての権利を最大限生かすこと。普段よく行くスーパーや洋服のブランドの企業などに、“こういうものを置いてほしい”とか、“こういう理由でいらない”とか、声を届けることなんですね。これはクレームとは違って、ポジティブな声を伝えること。企業は、消費者は何が必要で、何を求めているのか、いつも探っています。私たち消費者がポジティブな意見を発信することで、企業はエシカルやサステナブルの方向の一歩を踏み出しやすくなると思います。

 

SpringStep: そうですね、声を出す、行動をすることで何かが変わることって、必ずあると思います。

 

末吉さん: 例えば、全国展開しているイオンスーパーは、たったひとりの主婦の声からフェアトレードのものを売るようになりました。今では、イオンはフェアトレードや他の認証製品を販売するリーディングカンパニーで、自社製品もフェアトレードの認証がつけられているものも結構あります。声を出すというのはなかなか勇気がいることですが、頑張って2歩目、3歩目につなげていただきたいです。

 

SpringStep: ぜひやっていただきたいですね! 本当にすばらしいお話の数々をありがとうございました。

 

PROFILE

末吉里花 / 一般社団法人エシカル協会代表理事、日本ユネスコ国内委員会広報大使

慶應義塾大学総合政策学部卒業。TBS系『世界ふしぎ発見!』のミステリーハンターとして世界各地を旅した経験を持つ。エシカルな暮らし方が幸せのものさしとなる持続可能な社会の実現のため、日本全国でエシカル消費の普及を目指している。2021年から使用される中学1年生の国語の教科書(教育出版)に執筆。著書に『はじめてのエシカル』(山川出版社)、新刊絵本『じゅんびはいいかい?〜名もなきこざるとエシカルな冒険〜』(山川出版社)ほか。東京都消費生活対策審議会委員、日本エシカル推進協議会理事、日本サステナブル・ラベル協会理事、地域循環共生社会連携協会理事、ピープルツリー・アンバサダーなどを務めている。

https://ethicaljapan.org

Spring Step News Letter
のご登録