【気候活動家モデル、小野りりあんさんに聞きました】私たちにもできる、地球へのアクションって何ですか?(前編)

Way of living Women's life Organic Lifestyle Green Tech Special Interview
2022.04.21

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TEXT: Shiho Tokizawa /  PHOTO : HAL KUZUYA

 

CHICO:本日はお話を伺えるのを楽しみにしていました。今は一時的にロンドンにいらっしゃるんですよね。以前から計画されていたんですか?

小野さん:前から行きたいとは思っていたんですが、スケジュール的に今がいいかなと思って。

 

CHICO:早速ですが、(小野)りりあんさんのされている活動についてお伺いしたいです。今やSDGsが社会的なブームになっているというか、そういったことに興味を持つ人が増えていて。りりあんさんのお話を聞きたいという方も増えたと思うのですが、そもそも環境活動に興味を持たれたきっかけは何だったんですか?

 

小野さん:感性豊かな子供時代を北海道で過ごしたことも影響していると思いますが、環境や社会問題、人権に関心が高い家で育ったことが大きいかな。母は物を多く持たない、ミニマリストに近いくらいの人。旅も好きで、私を世界中あちこちに連れて行ってくれました。そのときに、地球は美しいということと、世の中には不平等が存在するんだということを知りました。そんな背景もあって、8歳くらいの時には、本気でこの不平等をどうにかしたいと思っていましたね。踊るのもすごく好きだったので、将来は世界を救うのに役立つ人になるか、本気でダンサーを目指すのか、どうしよう!って真剣に悩んでいるような子供でした。

 

CHICO:スケールの大きいお子さんだったんですね!

小野さん:子供時代って大きく考えやすい時でもあるのかなって思うんですけどね。でも、旅に連れて行ってもらっていたからこそ、物事を世界規模で見る視点を養えたんだと思っています。ダンスや自己表現の素晴らしさを伝えるワークショップを内戦のある地域の子供に向けて無料で開催できるような団体を作れば、戦っている国同士でも、みんな同じ人間なんだということに気づけて、戦争をやめるかもしれないって考えたり。

 

CHICO:りりあんさんにとって国境を越えるということが、わりと日常に近いというか、そこまで特別じゃないということですね。

 

小野さん:そうですね。だいぶ特殊な家庭で育ったなとは思っています。周りの価値観の感覚とズレているな、というのはなんとなく感じていました

 

CHICO:りりあんさんは今地球に起きている環境問題を、ものすごく自分ごとに捉えられているじゃないですか。今のように活動家としてスピークアウトされていることも、自己表現に結びついているんでしょうか?

小野さん:正直言うとまだ模索中です。なぜ気候変動に本気で向き合おうと思ったのかというと、“いつかできたらいいな”と思っていたことにタイムリミットがあると知ったから。人生においての優先順位が変わったんです。昔は何かを表現することの方が優先だったけど、現状を放置していたら、そういった表現を楽しめる未来もなくなってしまうんだって気がついて……。だったら後回しにしていられない、やらなきゃいけいない!と思ったんです。それがデンマークの学校に行った時ですね。

 

CHICO:デンマークでは、どのような勉強をされていたんですか?

 

小野さん:環境の勉強を始め、世界規模のいろんな問題を学んだり。問題解決のためのプロジェクトの立て方を考えるクラスも取りました。その学校で初めて、同世代で話せる人に出会えたんです。すごく変わった家庭で育ったから、日本ではそれまで価値観を共有できる人が見つけられなかったんですよね。カミングアウトできない、みたいな感じで。でもデンマークでの体験をきっかけに、もしかしたら日本にも同士がいるかもしれない!と思って、帰国後に気候マーチ(パリ協定を求めるために東京で行われた気候デモ)に参加しました。そこで、価値観を共有できる日本人の同世代を見つけたんです。ようやく私が私らしくいられる場所にたどり着けたので、そこからどんどん学びを深めていきました。その中で、地球にはタイムリミットがあるって気がついて。それで、環境活動に比重を置いて生きていく方法を探り始めました。

 

CHICO:日本って、人と違うことをスピークアウトすることは難易度高いじゃないですか。軽やかなものに関心が集まりやすい風潮があって、環境をはじめとする社会問題を自分ごとにしにくい。これは日本のカルチャーなのか分からないですが、ボトムアップがすごく難しい国だとも思っているんですけど。それでもりりあんさんはスピークアウトをして、問題提起を続けている。そういう活動をやってみようと思ったきっかけは何かあるんですか?

 

小野さん:たくさんありますが、2019年の秋に飛行機に乗らない世界一周の旅を始めたころから、ギアを上げた気がします。心の中にあるモヤモヤをそのままにしたくない、後悔したくないって思ったんですよね。気候変動について、何となく恐れていたことが実際問題として現実に起き始めていると気づいた時に、“今頑張らないでいつやるの?”って思いました。プライベートでもちょうどその頃に、長年付き合っていた彼と別れたタイミングだったので、人生これからどうしようかなって考えていた時期だったんですよね。人生計画がガラッって変わってしまったから、だったらもう、とことん突き詰めてやったほうが後悔ないかなって思いました。彼とのお別れはキツい出来事で、世界一周の旅は傷心旅行でもあったんですけど。でも旅を通して、今までモヤモヤしていても言えなかった環境問題に対する意見を堂々と言えるようになった。自分にとって大切だと思えることを言えたことは、すごく解放的な体験でもありました。発言をしてみると、意外と周りが関心を持ってくれて。もしかして、みんな実は興味あるんじゃない?って思って。だったら遠慮なく発信していこうと思った感じですね。あとは、2020年に起きたオーストラリアの山火事もひとつのきっかけかも。このときから、自分が知っていることをホワイトボードに書いてSNSに投稿する、ということを始めました。世界を見渡すと、自分がかっこいいな、勇気あるなって思えるロールモデルになるような女性がたくさんいて、その人たちの姿にも励まされましたね。日本にもそういう人が必要だなって思って、それなら自分がやって見せれば、私の姿に勇気付けられる人がいるかもと考えました。日本は完璧主義な人が多いから、それがハードルになってる気もするんです。でも私が下手くそでも声を上げることで、完璧じゃなくたって声をあげていいんだって、励ましになるかもと思って。

 

CHICO:なるほど。すごく勇気がある行動だと思います。

 

小野さん:恥ずかしいと思っている間に地球が終わってしまう方が犠牲が大きいので、そう考えるといいやって思えます。それだけ危機迫った状態であると知ったことで、自分の殻を破ることができました。

 

CHICO:ポッドキャストも聴いていますが、りりあんさんの言葉は分かりやすいですよね。決して難しくなく、リスナーが自分ごとにしやすい言葉を使っている。いいことだけを押し付ける訳でなく、リアリティを等身大の言葉で表現してくださっているところがすごく響くというか。

 

小野さん:ありがとうございます。

 

CHICO:聴きやすくて、環境問題が遠くに見えないような感じがするんですよね。難しい言葉を咀嚼して表現してくれていますよね。環境問題に興味を持ってもらいたい人って、普通の人たちじゃないですか。意識がすごく高い人ではなく。普通の人の絶対数が1番多いと思うので、その人たちの意識をそこに向けてもらうことが大事だと思います。そして、これから学び始める方にとって、りりあんさんの言葉はとても響くのではないかと感じます。

 

小野さん:私、最近難しい言葉も使えるようになってきちゃったからなぁ(笑)。でも確かにそうですね。ただ、私はいろんな一歩一歩を積み重ねてきていて、今は普通の人にとってはハードル高すぎることにもチャレンジしているので。そこのギャップは感じます。みんなをどうやって巻き込んだらいいか、少し分からなくなってきちゃってる。

 

CHICO:どこで話すかにもよるかもしれませんね。

 

小野さん:みんなが乗っかってこれるような土台を、まずは周囲にいる人たちと作りたいと思っています。個人レベルでできることは限られてきているしね。個人で何かすることもとても大事なんだけど、それだけでは足りないレベルのことが起きているので。例えるなら、気候変動という名の隕石が落ちてきている状態。

 

CHICO:わかりやすい例えです。

 

小野さん:例えば隕石が地球に落ちてくるまで、タイムリミットがあと3年って言われたらすぐに危機感を感じるだろうけど、気候変動は見えづらいし、生活に落としにくかったりする。原因になっているのは社会構造ですしね。

 

CHICO:それによって起きた結果しか見えてこないというか。

 

小野さん:“みんなで立ち上がろう”というのをいかに分かりやすく伝えるかを考えているところではあります。非暴力的で平和でありながらも敢えて法に触れる形でアプローチし、政府や関心がない人にも無理やり気づいてもらう手法(市民的不服従)があるのですが、その活動を実際に行なっている人たちがどのようにオーガナイズし、誰でも参加できるようなデザインをしているかという勉強をしています。もちろんそれだけではありませんが、自分が今中心に置いているプロジェクトとしてはそれが大きいかな。

 

CHICO:人を巻き込んでいくための手法ということですね。

 

小野さん:そうですね。効果的にアプローチするためには何が必要かということ。

 

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CHICO:社会構造を変えるというのは、すごく難しいことですよね。特に個人の力で何かをするというのは本当に難しいと思うんですけど。今まで利害関係で関わってきた人たちが既にお金を持ってしまっているし、壁を厚くする人も多いのだろうなと感じます。会社ではなく、その事業に関わる個々人のメンタリティを変えていくということしかないようにも感じます。「会社でこういうことをしているけど、自分はやりたくないです!」みたいな。

 

小野さん:じゃあどうやったらその人を「こんなことやりたくない!」って言えるくらいのレベルに持っていけるのかと考えた時に、やはり大胆に社会を揺るがしている団体が目立つとか、その人たちの起こすアクションにたくさんの人たちが参加しやすい仕組みを作ることが大切だと思います。例えばイギリスでは、2019年の4月にそんなストライキが既に起こったんですね。それは過激なものだったけど、みんな無理矢理にでも考えさせられたし、賛成する人も反対する人も気候変動について語らずにはいられない環境を作った。語る文化を作っていったとも言えます。それにより、今まで「気候変動」だったものが、「気候危機と生態系の絶滅の危機」であるという共通認識がイギリス全体のカルチャーとして生まれたんですね。運動というのは、そもそもの構造を変えていこうというアプローチもするけれど、社会全体の文化を変えていく効果もあるんです。見えにくいかもしれないけど、人々の意識を変える効果もあるのかなと。そういう意味でも運動は大事だなと思います。

 

CHICO:そうですね。その時のイギリスの運動はどんなものだったんですか?

 

小野さん:中心街の車が行き交う広場など、道が重なり合うところを5ヶ所閉鎖し車を通れなくして、その真ん中にメッセージの書いてある大きなボートを置いたり、100人以上入れるヨガテントを設置したり。フェスの舞台も作ったりして、1つの村を作ったんです。その状態を2週間。

 

CHICO:その2週間の間に、警察がそれを撤去することはないんですか?

小野さん:もちろん、警察との戦いですよ!だから、いかに警察に止めさせないようにするかということを考えるチームもあるし、生み出した空間にいろんな人が安心してアクセスできる方法を考えるチームもある。ある意味では、フェスが常に行われている状態ですね。法律的に見るとダメとされることをやっているので、毎日200人くらいが逮捕されるんです。道を閉鎖する役割の人がいて、その人たちは逮捕されます。でも、たいていの場合はそこまでの刑ではないので、みんな釈放されるんです。なので、釈放されたら1日休んで、次の日にまた占拠しにいく……ということを、交代でやる人たちがいます。

 

CHICO:めちゃくちゃインテリジェンスの高い行動ですね。

 

小野さん:そう。インテリジェンスの塊なんです。それで“じゃあ誰がリーダーなの?”ってなっても、実はリーダーはいないんです。

 

CHICO:えー!

 

小野さん:指揮する人がいない。だから、誰一人として全体を把握していないんですよ。(編集部注:self organizing systemと言って、ホラクラシー組織に近い体制)

 

 

CHICO:それは“集団”でやることで、何となく成り立ってしまうということですか?

 

小野さん:このアクションが必要だよねってなった時に、じゃあ1000人分の水どうする?となれば、水を管理するチームが立ち上がります。同じ流れで、食糧管理チームやトイレ管理チームなどが立ち上がるんです。それぞれに役割分担があって、みんな自分の担当をしっかり受け持つ。だけど、他に誰が何をやっているかは分かっていないんですよ。

 

CHICO:面白い!

 

小野さん:お互いがお互いを信頼しているからこそできると思うんですけど。もちろん情報伝達する係も必要なので、何かが起きたときに必要な所にそれを伝えるチームもあったりします。コレクティブなんですね。

 

CHICO:それは間違いなくニュースになりますし、「こんなすごいこと起きてるけど、行ってみる?」みたいな感覚で、足を運ぶ人も多そうですね。

 

小野さん:計画した側も、ここまで成功するとは思っていなかったみたい。最初は20人くらいの小さい規模でやってみて、警察の反応を見て、改善させてってことを繰り返して研究をしていたようです。これは手法としては法を破ることを選んではいるけれど、みんなでどう考えてどう行動できるかと部分に関しては、学ぶことがすごくある。日本でも参考になる部分があるんじゃないかなって思います。まだ具体的なイメージは描けていないけれど、こういうことを一緒に研究できる人たちが見つかればいいなって思っています。あと、先ほど話が出た、お金持ちの人たちが権力を持っているから、その人たちが変わらないと構造が変わらないということに関して言うと、私のアメリカの知り合いは、いろんな権利を持っている人と1対1で話して直接アプローチをしていますね。コンサルのような立場にいて、話し合いをすることで化石燃料に回っていたお金を再生エネルギーに回すというような活動です。本当にいろんな形があるんですよね。

 

CHICO:それを聞くと、やはり個人で動くことも大切ですね。 “何とかしなきゃ”という個の意識を持って、大なり少なりそれぞれが取り組む。これを増やしていくしかないのかな。

 

小野さん:そうですね。でも、それを増やすためには、まずはどうやって危機感を伝えていくかが大切だなって思っています。

 

後編に続く

 

PROFILE

小野りりあん/モデル・気候ムーブメントクリエイター

89年八戸生まれ札幌育ち。Spiral Club共同設立。

Green TEA ~Team Environmental Activists発起人。できるだけ飛行機に乗らず、気候正義活動家を尋ねる世界一周の旅の実践から、気候変動情報&アクションを発信。

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