「子供のブレインブーストプログラム開発者にききました」子供の脳の発育を高める運動とは?

Way of living Lifestyle Special Interview
2022.06.09

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7歳までに行わないと白紙に戻る、脳の発達能力

TEXT : Spring Step 

Spring Step : ムニラさん、お久しぶりです!私の娘たちがお世話になったのがコロナ前にフランスに行った時なので、もう3年ぶりくらいですね。


ムニラ・オズモンドさん(以後ムニラさん) : そうですね。あの時から暮らし方が一変しました。私もパリの中心から、郊外にある森のすぐそばの一軒家に引っ越しました。私は南アフリカ出身なので、やはり身近に自然があることがどれだけ大切かを実感したんですね。毎日森に散歩に行っています。


Spring Step : ムニラさんは、ニューロビクスキッズ(Neurobics kids)という子供のためのブレインブーストプログラムを開発、実践されていますが、そもそもこの(Neurobics kids)とは、どのようなものなのか教えていただけますか?


ムニラ・オズモンドさん : ニューロビクスキッズ(Neurobics kids)というのは、NEURO – 神経とBICS –  ライフ、またエアロビクスのような体を使うエクササイズ という二つの言葉を繋げたものです。ですから、脳神経を活性化させるための運動です。動きと感覚機能を統合させた、ホリスティックなアプローチで、子どもたちのニーズをよりよく理解し、幸せな毎日への成長をサポートできるメソッドです。


脳の発達のためには3つの主要な要素があります。サバイバル脳、エモーショナル脳、そして楽しんだり、学ぶ機能を担うコルテックス(脳皮質)です。これをそれぞれ覚醒させます。

アーリーエイジの子供たちの脳のは、まだしっかりと機能できる状態に整っていません。赤ちゃんが動くたびに、徐々に活性化されていきます。動きや見たり聞いたり、五感を使った感覚的な経験値は、脳が活性するために必要な道筋です。その経験をすることで、全ての脳の構築が整います。その道筋を7歳までに行わないと、脳はその発達能力を白紙に戻してしまうのです。ですから、赤ちゃんからアーリーエイジの子供たちは動けば動くほど脳が整います。

これは、ボディアップアプローチと言って、体を使って、感覚による情報を使い脳を整えます。


私は大都市に移り住んで、今の子供たちは、私が小さかった時にできた体験と同じことはできないと思いました。空間が少ない、時間がない、両親と一緒にいる時間も少ない。幼稚園から帰ったら注意深く子供のいうことを聞いたりする時間は、大きなことに見えないかもしれないけれども、実はとても大切なことです。そして、外に連れ出して体を使わせることも本当に大切なことなのです。子供だからといって不安な気持ちがないわけではありません。外に出て体を使うと「気分が良くなった」と感じることそのものも大切です。

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脳と体のコネクションを強化するニューロビクスとは?

 

 

 

ムニラ・オズモンドさん : ニューロビクスでは感覚システムを整えることが基本ですが、感覚システムを整えるために、二つのシステムを鍛えます。

 

1バランスシステム 体のバランス感覚を整えること

2タッチシステム 触る、肌、関節、筋肉を使うこと

 

この二つが大きなものですが、これは脳にとって、「パワーハウス」とも呼べるほど、脳の発達に大きな影響力を持ちます。

 

ジャンプ、上下前後運動などのバランスを使う動き、例えば、車に乗っているときの車酔い。自分は動いていないのに、動いているのという感覚のアンバランスによって起きる病気です。

感覚システムが養われると、安全だとか、地に足がついているとか、どうやって自分が動いたら良いのか、またそれにどのくらいエネルギーを必要とするかが感覚的に養われます。また、例えば、そのコップを持ち上げるのに、どのくらいの力を要するか、ということもそうです。なぜ子供は両親の近くで眠りたがるのか。せまい場所に隠れたがるのか、ぎゅっと抱きしめられること、実はこういったことも感覚システムを強化するのです。

 

Spring Step :  確かに子供は狭い場所が大好きですね。

 

ムニラ・オズモンドさん : そして、重いものを持つ、押す、引く、などのバランスを養うアクティビティーは、感覚システムを活性化させるだけではなく、それをやった後に「気分が良くなった」と感じるのです。私たちもマッサージの後、あー、いい気持ちだった!って感じるでしょう?これは筋肉を押されたり、つままれたりするからなんです。子供たちはそれと同じ気分を感じているのです。

 

Spring Step :  歩き始める頃に、とにかく色々押したがるのは、押すと気持ち良くなるからなんですね!なるほど、それは、繰り返しやりたくなりますね!!!

 

ムニラ・オズモンドさん : 気持ちがいいと、もっともっとやりたくなるでしょう。それが脳の発達の基礎作りなんです。ですから、私は子供たちを「動き」で遊ぶことと、感覚的な「動き」に戻すことをしたいのです。

 

Spring Step : それも7歳までが鍵なんですね。

 

ムニラ・オズモンドさん : はい。 0歳から7歳は脳の発達において「感覚」と「動き」が最も重要になる時期です。でも脳は柔軟性を持っていて、一生変わり続けていきます。0歳−から20歳の間に、脳の発育が完成します。だからその間にできることは本当にたくさんあります。

研究によると、神経系を高める特別なエクササイズをすることによって、60歳や70歳の人間の脳も活性化することが認めらています。

 

Spring Step : 筋トレと一緒ですね。

 

ムニラ・オズモンドさん : そうですね。歳をとると、さまざまな動きの範囲が狭くなります。「あー、年をとったからね。」ってみんな一言で済ませてしまいますが、優しい動きのエクササイズに導くことで、脳は再び目覚めていくのです。

 

Spring Step : そこまで歳をとっていなくても、今日の私たちのように、一日中体を使わずにパソコンの前に座って仕事していたら、脳も動かなくなりますよね。笑

 

ムニラ・オズモンドさん : 私たちは、自分がより良くなることに対する十分な情報が足りていないと思います。例えば、ストレスは、脳の構造を変えますし、メンタルヘルスはコロナによって、今大きな問題となっています。もし、運動や感覚機能を使うことが脳の発達の基礎を作るということならば、その中には、解決法も見つけられると思います。

 

Spring Step : 鬱、やる気がない。。。そんなことにもニューロビクスは解決法になるのでしょうか?

 

ムニラ・オズモンドさん : ムーブメントセラピーは、グラウンディング(地に足をつける)させるので、それによって安心感を与えます。気分をアップさせるには、グラウンディングと安心感、それがまず最初に始まる大切な二つのことです。

これまでたくさんの研究がなされていますが、例えば、熱い、冷たい、濡れてる、、など感覚的な情報を脳がキャッチして、認知することで、脳はマインドフルな状態にアクセスしやすくなります。この感覚の認知なしに、気持ちを落ち着けたり、リラックスすることは不可能です。

例えば、蝶々が肩に乗ったら、「ただ蝶が肩に乗っているだけ」と思うでしょうが、後ろから、ライオンが手を肩に乗せてきたらそういうわけにはいきませんよね。正常に感覚システムが機能すれば、私たちは安心します。だから、もしあなたの感覚システムがしっかりと機能していないとしたら、不安になるということなんです。

 

エクササイズなど体を動かすだけで、自然と気分が良くなります。それだけではなく、集中力を養います。ボディフィットだけではなくて、賢い脳を保つためにも大切なことなのです。

そして、自己肯定感や自信を高めることも同じです。特定の動きをすることで変わっていきます。心理学で使われる言葉で「戦うか逃げるか反応」というのを聞いたことがありますか?ストレスで逃げ出したいくらい恐ろしい時、凶暴になることがあります。コロナによって、子供たちは、まるで崖っぷちにいるような状態だったといえるでしょう。つまり、この新しい生活様式でどのような態度をとって良いのかわからない、どうやって気分を良くしたら良いのかわからない。という不安に満ちた心の状態です。だから、叫んだり、ものを親に向かって投げたり。それはどうやって気分を良くできるのかわからないからです。

 

Spring Step : そうですね。大人も多くの人がコロナモードに慣れてしまい、そこからコロナ後の次の生活様式に慣れていったら良いのかわからない人が多いと思います。

 

ムニラ・オズモンドさん : 大人も子供も、「戦うか逃げるか反応」になった時というのは、大きなストレスが生まれますし、病の原因にもなります。だから、体を緩ませることが本当に大切です。

 

Spring Step : そうですね。コロナでなくても、ストレスフルな緊張状態が長期にわたって続くことで、私たちはストレスによって健康を失うこともありますよね。

 

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ハイハイが最重要エクササイズである理由

 

 

Spring Step : ニューロビクスのセッションでは、どんなアクティビティーを行っているのかを教えてください。

 

ムニラ・オズモンドさん : まず、呼吸からスタートします。そして気功で使われるエモーショナルタッピングと言う方法から始まります。目を閉じて、全身の関節をタッピングするのですが、そうすることによって、体全体のマップ(地図)を感じることができます。呼吸と体全体を感覚で認知することは、体と脳の繋がりを深めます。

 

次に、15−20分の優しいリズミックな動きをします。例えば、ズリバイやハイハイでしょうか。この二つは子供たちにとって、大変重要な動きです。

 

Spring Step : なぜそこまでハイハイやズリバイのような動きが重要なのでしょうか? 

 

ムニラ・オズモンドさん : 脳には右と左があり、それを繋げる脳梁があります。体の左側と右側を交互、または同時に使うことで、左右の脳の繋ぎを強くします。自分がどう感じるかが主軸になる右脳と、他の人がどう感じているかを理解しようとすることや、心をそのままに表現しようとする左脳です。その二つの関係性のバランスが取れるようになるでしょう。

 

他にも、子どもがよく紙を切るときに、口を開けているのを見たことがありますか?女性がマスカラをつけるときに口を開けてしまうのも同じ理由なのですが、これをオーバーフロウムーブメントと言います。一つの動きをするとき、別の体の箇所も、無意識に一緒に動いてしまうというものです。体の一部を動かすとき、本来ならば脳はその動きに集中するべきなのですが、他の場所も同時に動いてしまう時があります。これは、左右の脳のコネクションが上手くいっていない時に起きます。これをオーバーフロームーブメントと言いますが、ずりばいやハイハイの動きをすることで、一つの動きに集中して、オーバーフロームーブメントが起きることを避けることができます。

 

3つ目は、スキルビルディングのためのエクササイズです。これは「押す」、「引く」などの動きを使ったゲームを行います。これは主に動くことで「楽しさ」を感じてもらうことです。「楽しい」と感じる脳を作ることです。

そして、最後にまた呼吸をして終わります。

 

Spring Step : 脳神経を発達させるエクササイズをした子供とそうでない子供とでは、どのようなことに差が出るのでしょうか?

 

ムニラ・オズモンドさん : 私が学んだ中では、神経と体のコネクションが整っている子供の方が、学校などでも集中力が高まって、聞く力がつくので指示にしっかり従うことができます。それは、聞いた情報の理解が深まるからです。またストレスに対しても強くなります。自信、記憶力の上昇など。また6ヶ月間実践することによって、他の子供よりも8−12ヶ月の学習能力が高くなったと言われています。

 

Spring Step : それは、多くの違いが出ますね。

 

ムニラ・オズモンドさん : あるクラスルームで定期的に行った実験によると、算数、読む力、書く力、オーガナイズ力など、また変化への適応力に変化が出たという結果が出ています。

 

Spring Step : 私には、双子の娘がいますが、一人は集中力も学習意欲も高いのですが、一人は学ぶことに対してすぐに「難しい」と言ってチャレンジしたがらないのです。ニューロビクスを実践したら、変わるかな?ってお話を伺って思いました。笑 でも彼女は、絵を描いたり、色塗りをすることが大好きで、とても上手です。

 

ムニラ・オズモンドさん : 子供それぞれの感覚能力のスタイルをしっかりと観察することはとても大切です。「うちの子はこれができない、あれができない、」とストレスに感じたり、「これができなきゃだめ!」というふうに押し付けてしまう前に、まずその子の感覚能力のスタイルを理解しましょう。その子は何をどんなスタイルで好むのか、それが分かれば、得意なことをどんどん伸ばしてあげることが可能です。

じっとして、文章を読むことが好きな子もいれば、動くことが好きな子もいます。ですから、その子が何を好むのか、なぜ好むのかをよく観察して、それに合わせてあげることが良いのですが、それはいつも容易であるとは言えません。例えば、私の娘はじっと座って読むことが大の苦手。だから彼女には、立って読ませることを進めていました。場合によっては、座ることそのものが問題だったりするわけです。

感覚スタイルによって、学ぶスタイルも自然と変わってきます。それはつまり、どのように情報を取得しているのかとも言い換えることができます。娘はハンズオンスタイル(実地によって学ぶ)なので、字を書くことを学ぶことにも時間がかかります。でもそれが彼女のスタイルなのです。学校では、学ぶのが遅いと落ちこぼれのように見えますが、それでも、それが彼女のスタイルなのだと理解することが大切です。それをしっかりと受け止めて、彼女のポテンシャルを見極めること。それは子供の精神を肯定してあげることとも言えます。

 

Spring Step : 私は、ハンズオンスタイルだと思います。自分が実際に経験して初めて「情報」になるのですが、人によっては、話を聞いただけで、それをしっかり概念化して、「情報」として処理できる人もいますよね。私はぶつかって痛い思いをしないと学べないタイプです。笑

 

ムニラ・オズモンドさん : そうですね!他にも情報収集のスタイルとしては、文字を読むことだったり、聞くことだったり、イメージを見ることだったり、、人によってさまざまです。親としては、子供を観察して、どのスタイルがあっているのかを知るしかないですね。

 

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自閉症や失読症の子を持つ親たちへのサポートを

 

Spring Step : ニューロビクスを通して、実現したい夢はありますか?

 

ムニラ・オズモンドさん : そうね。今考えると、私の幼少期を客観的に見ると、感覚システムがあまり上手く機能している方ではなかったと思います。だからいつも物事を突然台無しにしてしまったりと、手に負えないところもありました。でもまぁそれが今の私自身のパーソナリティーになっていると思うんですが、大人になった今では、ちょっとピエロみたいにわざと面白おかしく振る舞ってしまったりすることもあったり、だからそういう所も含めて自分の中で折り合いをつけて生きています。これまで自閉症や失読症(ディスレクシア)、書字表出障害(ディスグラフィア)の子供たちを多く目にしてきました。このような診断が難しい症状を持つ子供たちの両親が私の所に来て、「うちの子供は、何かがフィットしていないと感じるのです」と言うのです。別に大きな問題があるわけではないんですが、態度に少し違和感を感じるとか、急にアグレッシブになるとか、学習能力や態度に何か問題がある、とか、医学的な診断で何かを判断されるわけではないのだけれど、子供は何か大変なことと向き合っているように感じるとか、友達と遊んだ後に、ものすごく疲労感を感じているようだ、とか、リラックスするのにものすごく時間がかかる、とか。そう言う子供たちを持つ親御さんのために、何が原因なのかを知るためのプラットフォームを作りたいと思っているのです。そういう人たちと情報を共有したり、エクササイズのプログラムを紹介したりできるような場所ですね。

しっかりとサポートをしてあげないと、子供は崖から落ちてしまうんです。学校では先生が集中力の足りない子供に「こら!集中しなさい!」と言うでしょう。でもその先生だけではなくて、他の先生も、その他の先生も同じように言うでしょう。親もそう言うでしょう。その子の自己肯定感はどうなると思いますか?

 

Spring Step : それは間違いなく子供の成長に大きな影響を与えるでしょうね。

 

ムニラ・オズモンドさん : そうなんです。私は、よく親御さんに聞くんです。「お子さんによくなんと言っていますか?」って。「片づけなさい」、とか「口の中を食べ物でいっぱいにしたままで喋らない!」とか、色々あると思いますが、子供たちは同じことを常に言われることで、実は過剰に敏感になっていきます。どの子供も世界が広がっているはずなのに。

だからニューロビクスがそう言う子供たちやそう言う子供を持つ親御さんたちに必要な情報を共有し、サポートになればいいなと思っています。世の中に「悪い子」はいないのです。必要なのは、なぜそう言う態度を取るのかという原因を理解するための観察です。

 

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今日からできる、子供の脳を活性化させるニューロビクスエクササイズ

 

Spring Step : 脳を活性化させるために、家で今からできるエクササイズはありますか?

 

ムニラ・オズモンドさん : ファーストステップは、親子のコネクションを作ることです。まず子供の自主性を応援することです。それによって自信や信頼を育みます。でも多くの場合、親はその様子を見て、イライラして「あれしなさい、これをしなさい、それをしてはダメ、あれはだめ」といった具合に指示します。でもそれは正しい方法とは言えません。信頼関係を作るには、子供の意志を尊重することから始まります。親にとって、それは容易な方法だとは言えないと思いますが。

でも長期的な信頼関係を作るでしょう。

 

セカンドステップとしては、子供に簡単なエクササイズをさせること、床の上で転がるとか、一緒に四つ這いになってライオンごっこをするとか。「ほら、今から捕まえに行くぞ!」なんて言いながら子供と四つ這いになってゲームのように追いかけっこをすればハイハイができます。他には、体の真ん中を主軸として左右を同時に使うエクササイズですね。手をパチパチと叩くことや、手遊び(アルプス一万尺のような)、ジャンピングジャック(両手をあげて、両足を開いてジャンプする)、クリスクロス(ジャンプしながら足を交差させる)など。これらの動きは、脳を活性化させる働きがあります。

 

Spring Step :  ムニラさん、早速我が家でもやってみます!今日はありがとうございました。

 

PROFILE

MUNIRA ORSMOND / ムニラ オズモンド

NEUROBICS KIDS ファウンダー

教育心理学を専門とし、教育学の大学院を修了し代替教育について学ぶ。ヨハネスブルグのシュタイナー学校で10年間教えた後、感覚統合と学習を専門にする。神経科学と子育て、原始反射の研究を続け、統合学習セラピーの認定資格を取得。故郷のプレトリアに戻り、学校を共同設立し、セラピストとなる。

2013年にパリに移住。現在は教育コンサルタント、学校教師、教師の指導、また自閉症の子供たちの支援をしている。

 

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